2013 Fiscal Year Research-status Report
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24620010
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Research Institution | Gihu University of Medical Science |
Principal Investigator |
田中 邦彦 岐阜医療科学大学, 保健科学部, 教授 (60313871)
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Keywords | 環境生理学 / 人間医工学 / 宇宙開発 |
Research Abstract |
現在の船外活動用宇宙服(以下、宇宙服)内圧は0.3気圧と低いため減圧症の危険を伴う。しかし内圧を高めると外部真空との圧格差増大による膨張で可動性が低下する。これまでに我々は伸縮性素材を用いたグローブでこの与圧と可動性という矛盾を解決してきた。本年度は金属フレームジャバラと昨年度入手した伸縮性素材で気密・伸縮性を確保した内層を付与した大関節模擬構造を製作し、与圧時の可動性を検証した。内層の伸長性が高すぎると、その内層が与圧時にプリーツ構造(ヒダ)の間に入り込むように膨張し可動性を低下させることがわかったため内層を3重構造とし、伸縮性を維持しつつ過膨張を防止した。またジャバラと伸縮性素材のみではプリーツが均一に伸長せず一部分のみに負荷がかかったため、フレームに索状構造を付与し均一に拡張させ、また過拡張を防止した。この索状構造と内層改良によって0.65気圧においても大関節の可動性を確保できた。これらの構造がなければ与圧時には全く稼働させることができないが、改良後も球関節として全方位に稼働させることは困難であり、索状構造を中心とした2方向の稼働性にとどまった。したがってその他の方向についてはベアリングで補助することとした。 宇宙服という閉鎖空間で長時間作業すると体温が上昇する。これを防止するため宇宙飛行士は冷却下着を着用している。この下着は皮膚冷却には有効であるが表面を覆う冷却水還流用のビニルチューブが汗の蒸散を阻害するため非常に不快感を伴う。今回我々は還流用チューブから緩徐に水分が漏出し、それが蒸散することによって身体冷却を促す「自己発汗スーツ」を考案・作成し、現行の水冷式スーツと運動時の冷却効果を比較した。皮膚温は水冷式のほうが早くから低下を認めたが運動継続によって次第に自己発汗スーツの冷却効果の方が高くなった。また衣服内湿度は自己発汗スーツの方が有意に低く、快適と考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在の船外活動用宇宙服(以下、宇宙服)ならびに申請者が研究を進めている宇宙服の基本構造は、内部酸素の漏出を防ぐ気密層とこれが破裂するのを防ぐ拘束層から成っている。申請者は可動性を向上させるためいずれの層にも伸縮性素材を使用してきた。これまで伸縮性素材を拘束層に用いる点で問題であったのは可動に無関係な部分の膨張であったが、昨年までの研究で金属フレームを用いることによって余分な膨張を防ぐことができると考えられた。本年はこれを実施するために実物大肩関節を作成し、改良を加えて有効性を確認するとともにさらなる問題点とその解決方法を明らかにすることができた。 また手関節の回内・回外および上腕の内旋・外旋にベアリングを使用するにあたって最大の問題はその気密性である。気密を保つためには密閉しなければならないが、可動性は低下してしまう。ここでも気密性・高与圧と可動性とが矛盾する。本年度、通常のラジアルベアリングと軸方向の耐荷重性がより高いスラストベアリングを作成し可動性を維持しつつ気密性を高める構造を検討することができた。 宇宙服は一般的にその外層構造ならびに可動性のみが問題視されるが、可動性の低い密閉空間で作業を行うため、体温が著しく上昇し多量の発汗とともに体力を消耗する。これを軽減させるため冷却下着を宇宙飛行士は着用しているが、今回新しいコンセプトの冷却下着の作成、検証を行い、論文投稿に至った。
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Strategy for Future Research Activity |
まず四肢・体幹の回転運動を円滑に行うための独自のベアリング構造を作成し検証する。平成25年度の研究において各種ベアリング構造の利点・欠点を明らかにすることができたためこれに可能な限りシンプルな気密構造を付与し、高気密性と高可動の双方を実現する構造の開発と検証を行う。これに、これまでに開発・検証を行った金属フレームジャバラ構造を接続し、頭頸部以外の構造決定を行う。 冷却下着については、平成25年度に作成・検討した自己発汗スーツでは発汗・蒸散量が調節できず、過度に冷却してしまう、あるいは必要と感じた際に冷却効果が不足するといった欠点があるため、これに調節機構を付与し、また還流用ポンプを小型化・装着可能にして人体での検証を行う。また、この冷却下着については宇宙服のみならず市販の空冷ジャケットと合わせて使用することで地上での各種作業においてもその快適性を向上させることができると考えられるため、実用化を目指す。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
金属フレームジャバラ+伸縮性素材による与圧下での大関節稼働機構、ならびに自己発汗スーツについて特許申請する計画を立てていたが実験途中でいくつか新たな問題点が出現したため、それらの解決を優先させたところ申請にいたらなかった。そのための費用を次年度に使用させていただきたい。 次年度は先の報告のとおりベアリングの気密機構の開発・検証とジャバラ機構との融合、自己発汗スーツの改良とそれらの特許申請の可能性を探りたい。
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[Journal Article] Arterial pressure oscillation and muscle sympathetic nerve activity after 20 days of head-down bed rest.2013
Author(s)
Tanaka K, Nishimura N, Sato M, Kanikowska D, Shimizu Y, Inukai Y, Abe C, Iwata C, Morita H, Iwase S, Sugenoya J.
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Journal Title
Autonomic. Neuroscience.
Volume: 177
Pages: 266-270
Peer Reviewed
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