2012 Fiscal Year Research-status Report
重粒子線低フルエンスで誘導されるバイスタンダー効果の線質依存性の解明
Project/Area Number |
24620014
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | National Institute of Radiological Sciences |
Principal Investigator |
鈴木 雅雄 独立行政法人放射線医学総合研究所, 重粒子医科学センター, 主任研究員 (70281673)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | マイクロビーム / 重イオン / プロトン / 細胞増殖死 / バイスタンダー効果 / ギャップジャンクション / 細胞間情報伝達機構 / P53 |
Research Abstract |
項目別目的1『細胞レベルの異なる生物効果(細胞致死、遺伝子突然変異)に対するバイスタンダー効果の放射線線質依存性を明らかにする。』のために、日本原子力研究開発機構の重イオン(炭素、ネオン、アルゴン)マイクロビーム、高エネルギー加速器研究機構のX線マイクロビーム及び放射線医学総合研究所のプロトンマイクロビームを用い、公的な細胞バンクより入手したヒト由来正常細胞及びがん細胞のコロニー形成法で検出した細胞増殖死に対するバイスタンダー効果を明らかにする研究を実施した。高精度に制御されたマイクロビーム放射線照射法により、細胞試料が培養されたマイクロビーム照射用ディッシュの総面積に対してマイクロビーム照射面積が0.01%という大多数の細胞試料にマイクロビームの直接照射が行われない実験条件で細胞増殖死を解析したところ、炭素イオンマイクロビーム照射群の細胞生存率は88%となり、予想を超えて有意に高い細胞死を示した。一方、X線・プロトン・ネオンイオン・アルゴンイオンマイクロビーム照射群では、細胞生存率は100%となった。また、ギャップジャンクション特異的阻害剤を併用した場合は、炭素イオンに対する細胞生存率はその他の放射線マイクロビームと同様100%となった。以上の結果より、炭素イオンマイクロビーム照射でのみ細胞増殖死にバイスタンダー効果が誘導されたと結論した。また、観察されたバイスタンダー効果は、ギャップジャンクションを介した細胞間情報伝達機構が誘導メカニズムに関与していることが示唆された。次に、複数のヒト由来正常細胞およびがん細胞を用い、がん抑制遺伝子であるP53とバイスタンダー誘導の関係性を調べた。得られた結果から、正常型P53遺伝子を保持した細胞は、前述と同様のバイスタンダー効果が観察されたが、変異型P53遺伝子を保持した細胞ではバイスタンダー効果は観察されなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
所属機関における放射線照射実験ビームタイム(重粒子がん治療装置およびプロトンマイクロビーム細胞照射装置)が当初の配分通りに実行出来たこと、所属研究機関以外の研究機関におけるマイクロビーム照射実験において、採択されている共同研究課題(日本原子力研究開発機構重イオンマイクロビーム、課題番号:111023、課題名『遺伝子突然変異誘発に対するバイスタンダー効果とそのメカニズム解明』、課題代表者:鈴木雅雄)、(高エネルギー加速器機構機構X線マイクロビーム、課題番号:2011G572、課題名『X線マイクロビームを細胞核または細胞質に限定的に照射したときに生ずる生物効果のバイスタンダー効果解析』、課題代表者:鈴木雅雄)、に対して配分されたビームタイムが、トラブルによる遅延や中止が一切無く、研究実施に十分なビームタイムの供給を受けることが出来たため。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度は、新たに所属研究機関以外の研究機関における共同利用研究課題が採択された(日本原子力研究開発機構重イオンマイクロビーム、課題番号:131025、課題名『重イオンによるバイスタンダー効果誘導メカニズムの分子レベルでの解明』、課題代表者:鈴木雅雄)、(高エネルギー加速器機構機構X線マイクロビーム、課題番号:2013G072、課題名『X線マイクロビーム細胞質限定的照射に対する細胞応答(バイスタンダー効果)解析』、課題代表者:鈴木雅雄)。これらのマイクロビーム照射実験に加えて、所属機関でのプロトンマイクロビームおよび重粒子線がん治療装置を利用した照射実験ビームタイムは、平成25年度においても、本研究課題を実行する事に対して十分な回数・時間の供給を受けることが出来る予定である。これらを利用して、研究計画に従い粛々と実験を進める。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度の繰り越し分(97,118円)と平成25年度配分額(1,700,000円)の合計金額1,797,118円に関して、細胞実験に必要な消耗品(牛胎児血清、試薬、プラスティック機器、ガラス器機等)に987,118円、日本原子力研究開発機構、高エネルギー加速器研究機構での実験に必要な旅費および国内外の研究集会・学会での成果発表に必要ような旅費に600,000円、その他(論文英語校正費、論文投稿別刷り費、学会参加登録費等)に210,000円を充当する予定である。
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Research Products
(5 results)