2013 Fiscal Year Research-status Report
重粒子線低フルエンスで誘導されるバイスタンダー効果の線質依存性の解明
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24620014
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Research Institution | National Institute of Radiological Sciences |
Principal Investigator |
鈴木 雅雄 独立行政法人放射線医学総合研究所, 重粒子医科学センター, 主任研究員 (70281673)
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Keywords | マイクロビーム / 重イオン / 細胞増殖死 / バイスタンダー効果 / ギャップジャンクション / 細胞間情報伝達機構 / 液性因子 / P53 |
Research Abstract |
申請書類項目別目的2及び3に掲げたバイスタンダー効果誘導メカニズムの細胞内在性因子・外在性因子を明らかにする目的で、日本原子力研究開発機構の重イオン(炭素、ネオン、アルゴン)マイクロビーム照射に対するヒト正常細胞の生物効果のバイスタンダー効果誘導に関して、マイクロビームを照射された細胞よりメディウム中に湧出する液性因子によるバイスタンダー効果誘導の有無を明らかにするために、マイクロビーム照射後の細胞致死効果の時間変化動態を調べた。マイクロビーム照射後、細胞試料を0.5、3、24時間炭酸ガスインキュベーター内に保持し、それぞれのタイミングでの細胞増殖死をコロニー形成法で調べた。得られた結果から、炭素イオンマイクロビーム照射サンプルでは、0.5・3時間で細胞生存率は90%前後となり、ギャップジャンクション阻害剤添加によって生存率はほぼ100%を示した。また、24時間ではギャップジャンクション阻害剤の有無に係わらずほぼ100%となった。ネオンイオンマイクロビーム照射サンプルでは、0.5・3・24時間何れのタイミングにおいても、ギャップジャンクション阻害剤の有無に係わらず生存率はほぼ100%となった。一方アルゴンイオンマイクロビーム照射サンプルでは、0.5・3時間のタイミングでは生存率はほぼ100%であったが、24時間では生存率は約90%まで減少した。さらに、ギャップジャンクション阻害剤を併用しても生存率は100%に復帰することはなく、同様に約90%となった。この効果は、DMSOを添加しても変化がなかったが、アスコルビン酸を併用することによって生存率が100%まで上昇した。したがって、アルゴンイオンでは、照射後24時間でアスコルビン酸によって抑制される何らかの因子によって、細胞致死効果を増幅するようなバイスタンダー効果が誘導されることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
所属研究所以外の研究機関におけるマイクロビーム照射実験において、採択されている共同研究課題(日本原子力研究開発機構重イオンマイクロビーム、課題番号:131025、課題名『重イオンによるバイスタンダー効果誘導メカニズムの分子レベルでの解明』、課題代表者:鈴木雅雄)、(高エネルギー加速器研究機構X線マイクロビーム、課題番号:2013G072、課題名『X線マイクロビーム細胞質限定的照射に対する細胞応答(バイスタンダー効果)解析』、課題代表者:鈴木雅雄)、に対して配分されたビームタイムが、トラブルによる遅延や中止が一切無く、研究実施に十分なビームタイムの供給を受けることが出来たため。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度は研究計画の最終年度に当たるため、重イオンおよびX線マイクロビーム照射実験を継続すると共に、得られた実験データをまとめ、国内外の学会・研究集会で発表すると共に、海外の科学雑誌に論文投稿し研究成果を広く発信する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初の見積額と実際の納品価格との差。 返還予定。
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Research Products
(10 results)