2012 Fiscal Year Research-status Report
仮眠効果の規定因の検証 ―睡眠段階2の新たな質的分類基準を用いて―
Project/Area Number |
24621007
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
林 光緒 広島大学, 総合科学研究科, 教授 (00238130)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小川 景子 広島大学, 総合科学研究科, 准教授 (70546861)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 短時間仮眠 / 睡眠段階2 / 脳波 / シータ波 / 睡眠紡錘波 |
Research Abstract |
近年、15~20分程度の短時間仮眠の効果が注目されている。30分以上の仮眠をとると、深睡眠である徐波睡眠(睡眠段階3と4)が出現するが、仮眠中に徐波睡眠が出現すると起床直後に却って疲労や眠気が残り、さらにその夜に不眠が引き起こされる。15~20分程度の短時間仮眠であればそのような悪影響を引き起こすことはなく、仮眠後に疲労や眠気、作業成績が回復することを我々はこれまで報告してきた。このような短時間仮眠は睡眠段階1と2だけで構成されているが、睡眠段階1だけでは仮眠の効果はなく、睡眠段階2の出現が回復効果をもたらすこともすでに報告している。しかし、睡眠段階2の何が回復効果に関与しているかは不明であった。そこで仮眠中の睡眠段階2の脳波の定量的解析を行い、回復効果に寄与する脳波成分の抽出を行った。参加者10名に対して脳波を記録しながら14時より仮眠をとってもらい、睡眠段階2が3分間または9分間出現した時点で起こした。睡眠段階2の脳波を、高速フーリエ変換を用いてスペクトル分析し、δ(0.5-3.5Hz)、θ(3.5-7.5Hz)、σ1(11.5-13.0Hz)、σ2(13.0-16.0Hz)の帯域パワを求めた。また、complex demodulation法を用いて睡眠段階2に特徴的に現れる睡眠紡錘波を検出した。その結果、仮眠後の主観的疲労と眠気およびヴィジランス課題の成績は、θ帯域パワと睡眠紡錘波の出現量との間で有意な正の相関を示した。報告者による先行研究において、睡眠段階2の脳波の視察判定の結果から、θ波と睡眠紡錘波の出現が回復効果をもたらす可能性があると推察したが、今回の定量的分析によってこれらの可能性を実証することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今回、仮眠後の眠気、疲労および作業成績を測定するとともに仮眠中の睡眠段階2の脳波を定量的に分析することによって、シータ波と睡眠紡錘波の出現が回復効果をもたらす要因であることが分かった。このように本年度検討予定であった①背景脳波の分析と②突発波の分析を行うことができた。ただし、これらの結果が必ずしも脳波の定性的結果と一致しなかったこともあり、このことについては次年度以降、検証する必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度においても、仮眠の回復効果に関する実験的研究を行う。 健常な若年成人12名に実験に参加してもらう。仮眠中、睡眠段階2における各脳波段階で実験参加者を起こす。仮眠前30分間と仮眠後1時間にわたり、コンピュータ課題による作業成績を測定するとともに、眠気・疲労の測定のほか、脳波、眼球運動を用いて覚醒レベルの測定を行う。脳波の定量的、定性的分析によって各脳波段階における回復効果を明らかにする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
消耗品 \301,000 脳波測定用 電極(50,000),薬品類(50,000), 記録用HD(2台×@25,000) 脳波印刷用 プリンタトナー(111,000), 用紙(40,000) 旅費 \568,000 資料収集(71,000×2回×2名), 研究成果公表(71,000×2回×2名) 謝金 \231,000 実験参加者(12名×3回×3h×@800), 実験補助(36回×4h×@800), 資料整理(1名×5回×4h×@800) その他 \100,000 論文投稿料(50,000)、英文校正料(50,000)
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