2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24621008
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
中村 洋一 大阪府立大学, 生命環境科学研究科(系), 教授 (90180413)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
森山 光章 大阪府立大学, 生命環境科学研究科(系), 准教授 (20275283)
高野 桂 大阪府立大学, 生命環境科学研究科(系), 助教 (50453139)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | アストロサイト / ミクログリア / サイトカイン / 細胞外SOD / グリコーゲン / 神経栄養因子 |
Research Abstract |
平成24年度は,培養アストロサイトを用いて,神経細胞の生存維持に重要な働きを演ずる神経栄養因子類の産生や,酸化的ストレスからの保護作用が強い細胞外スーパーオキシドディスムターゼ(EC-SOD)の遊離に対して,いくつかの薬剤(ドパミン,イミプラミン)が影響を持つことを明らかにして,3報の原著論文を報告することができた。神経細胞の周囲を取り囲んで,脳全体のエネルギー代謝の要となっているアストロサイトの細胞機能が種々の薬剤により変化することは,アストロサイトの細胞機能変化が睡眠/覚醒のモードを切り換える役割を演じている可能性を示唆している。アストロサイトの細胞機能のうち,神経栄養因子やサイトカイン類の産生に加え,細胞外構造の形成維持に必須の働きを演ずるトランスグルタミナーゼ(TG)の消長についても複数の学会発表の機会を得た。今後は睡眠関連物質の作用の検討を更に推進したい。 脳内でのグリコーゲン合成能はアストロサイトに局在している故に,アストロサイトは脳のエネルギー貯蔵機能も果たしているとされている。エネルギーを貯蔵するか反対に放出するかの切換が何によってもたらされるかを見極めるには,アストロサイトのグリコーゲン合成の調節がいかなるものであるのかを検討する必要がある。培養グリア細胞のグリコーゲン合成と分解を定量化する測定法を確立することが平成24年度の検討課題の1つであった。グリコーゲンの高感度定量法としてNADP+を2種類の酵素を用いてサイクリング増幅する方法が知られているが,我々はそれを改良して,NADP+をG-6-P脱水素酵素とmethoxy-PMSを用いてサイクリング増幅し,WST-1色素の発色反応により直接サイクリング増幅をモニターする測定系を新たに開発できた。この方法により,24-wellに培養したアストロサイトのグリコーゲン量を定量することが可能となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
エネルギー代謝状況を解析するための検討課題の1つであったグリコーゲンの高感度定量法の確立に予想外に手間取った。原法(Passonneau, JV and Lauderdale, VR, Anal. Biochem. 60:405-412 (1974))は2種類の酵素G-6-P脱水素酵素とGlu脱水素酵素を用いてサイクリング増幅してできた6-P-gluconateを,更に3種類目の酵素6-P-gluconate dehydrogenaseを用いてNADPHの紫外部の吸収増加で定量する方法であるが,今回我々は,反応系を見直して,NADP+をG-6-P脱水素酵素とmethoxy-PMSを用いてサイクリング増幅し,WST-1色素の発色反応により直接サイクリング増幅をモニターする測定系を新たに開発することを試みた。測定系が簡略化され,しかも可視光部の吸収変化をモニターするため,測定が容易となったが,96ウェルプレートを用いる実験系を構築するのに,温度制御等の問題や反応条件の設定に時間がかかってしまった。 しかしながらアストロサイト及びミクログリアの細胞機能変化を捉える実験系は,トランスグルタミナーゼ(TG)の発現についても順調に論文発表できている。この系についても睡眠関連物質の効果を確認したい。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度に引き続いて,培養グリア細胞(アストロサイト,ミクロクグリア)を用いて次の項目について睡眠物質や修飾物質の効果を検討し,睡眠機構におけるグリア細胞の機能変化を検証する。 ①アストロサイトのエネルギー代謝:脳内でのグリコーゲン合成能はアストロサイトに局在している故に,アストロサイトは脳のエネルギー貯蔵機能も果たしている。エネルギーを貯蔵するか反対に放出するかの切換が何によってもたらされるかを見極めるには,アストロサイトのグリコーゲン合成の調節がいかなるものであるのかを検討する必要がある。24-wellに培養したアストロサイトのグリコーゲン量を定量化する方法がほぼ確立できたので,これを用いて睡眠物質や睡眠修飾物質の影響を検討する。 ②アストロサイトのグルタミン酸(Glu)輸送能:アストロサイトが持つ高活性のGlu取込は興奮性シナプス活動を収束させる重要な因子である。Glu取込活性が上昇することにより脳全域に汎在する興奮性シナプスが抑制され,睡眠状態が惹起する一因となりうる。本研究では,培養アストロサイトを用いて,各種睡眠物質の刺激によるGlu取込能の変化を検証する。Glu能動輸送体は起電性ポンプであり,膜電位が深くなるほどポンプ活性が増加することにより,シナプス活動がより抑制される。細胞外K+濃度を変化させることによるGlu取込活性の調節の詳細を明らかにする。 ③脳内のグリコーゲン量の可視化:最近グリコーゲンの蓄積を蛍光染色する色素2-(N-[7-nitrobenz-2-oxa-1,3-diazol 4-yl]amino)-2-deoxyglucose (2-NBDG) が開発された。この色素を用いて,睡眠/覚醒状況及び睡眠関連物質を投与した動物の脳内グリコーゲン量を半定量的に解析する実験系の構築を試みたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
物品費 1,962,000 円および旅費 38,000 円を予定している。 物品費は以下に掲げる消耗品等の購入に充てる予定である。 [H3]-glutamate,細胞培養用各種試薬,サイクリング用酵素・試薬類,サイトカイン測定用ELISAキット。 旅費は,国内学会(東京1泊2日)に参加して研究発表及び情報収集にあたる目的で使用する予定である。
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