2013 Fiscal Year Research-status Report
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24650001
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
徳山 豪 東北大学, 情報科学研究科, 教授 (40312631)
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Keywords | アルゴリズム / 計算幾何学 / アドホックネットワーク / 動力学的構造 |
Research Abstract |
アドホックネットワークにおける通信に必要なルーティングプロトコルに関して、主にジオメトリックルーティングと呼ばれる幾何学的情報を活用する手法を中心に研究を行った。既存のジオメトリックルーティングの特徴を検討し、重要な判断指標であるドローネグラフ上での到達保証を持つルーティング法に関して包括的な性質を与えた。これは、目的関数に関する幾何的な条件であり、また、このような目的関数の族が和と積について閉じているという代数的な性質を利用して、新しいルーティングプロトコルを開発する一般的な手法を与えた。これを用いて、4種類の新しいルーティングプロトコルを提案し、理論と実験により、従来のプロトコルよりも優れた性質を持つことを示した。 さらに、状況によってプロトコルを切り替える発見的プロトコルを提案し、与えられた評価指標に対して最適化を行えることを示した。 これらの成果は論文誌へ投稿し、掲載が決定している。また、2013年4月19-21に松島において国際ワークショップAAAC2013を開催し、共同研究者のHalldorsson教授に本研究テーマに関する招待講演を行ってもらった(経費は都合によりワークショップの全体経費から拠出した)。さらに徳山は2014年1月26日から31日にドイツダクスチュールで開催された無線通信アルゴリズムの国際ワークショップに招待され、世界のトップ研究者40名と研究交流を行った。 ここでは理論的なアルゴリズムと、現実のアドホックネットワークの実証実験における要件との差について論じて、アドホックネットワークにおけるアルゴリズム研究の研究の方向性を論じた。また、ロボットなどの分散ネットワークにおいて、可視角度情報からネットワーク形状を再構築する新しいアルゴリズムを提案し、格式ある国際会議であるISAAC2013に採録され、成果発表を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
次世代のネットワークの基本要素として、また、災害時緊急ネットワークとして、アドホックネットワークは非常に大きな期待を持たれる情報通信形態である。これは、幾何学的に配置され、移動する情報通信ノードが互いに通信するネットワークであり、計算幾何学で用いられる様々な幾何学的グラフが用いられている。しかし、移動幾何構造としてのアドホックネットワークの理論解析は現状では未開であり、本研究では、キネティック(動力学的)な移動体管理の理論手法を取り入れた新しいアドホックネットワークの理論的手法体系を世界に先駆けて実現することをめざし、次世代スマート社会での実用化に貢献することを目的として研究を進めている。 本テーマに最も深くかかわる国際学会ALGOSENSORSに毎年論文が掲載されるなど、コンスタントに論文発表を行っている。 テーマであった理論研究に関しては十分な成果である。 国際交流も実施しており、平成25年度は共同研究者のHalldorsson教授を4月に招聘(ただし経費はワークショップ全体から拠出)した。その他の海外研究者招聘も予定していたが、ドイツのダクスチュールで上述のHalldorsson教授が世界のトップ研究者を40名ほど集めて1週間のワークショップを企画したため、日本にそれらの研究者を招聘する代わりに、徳山がそちらに参加することに予定を変更した。 現実のシステム実装に関しては、研究代表者は東北大学にネットワークアルゴリズムセンターを設立し、その主催者として、現実のアドホックネットワークのインフラストラクチャに関わる研究者との相談や意見交換を開始しており、この点でも予定通りの進展を行っている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度には、平成24,25年度のテーマをさらに深く追及するとともに、その統合による現実のモデルに即したアルゴリズム設計を行う。 研究交流においては、若手でキネティックデータ構造の専門家である研究者を東北大学に短期招聘し、本萌芽研究が実際のアドホックネットワークの設計につながるための理論の構築への共同作業を行う。ここでは、さらに一般化し、多目的最適化問題を幾何学的な交差グラフで効率よく解くための条件を整備することをテーマにすることを予定している。 更に計算幾何学の分野で研究協力を行っている韓国、中国、香港等のアジアの研究者とのワークショップを開催しており(開催費用自体は本研究以外の資金を利用する予定である)、一方で、開発したアルゴリズムが現実のモデルで利用する場合の問題点についての検討と解析を、東北大学情報科学研究科の加藤寧教授、電気通信研究所の安達教授を中心とした東北大学の通信ネットワークの研究者との議論を行い、さらに実用に向けたモデル化の改良を行う。また、大学院学生をRAとして採用し、シミュレーションの実験を大規模化する。ここでは、現在までに開発したアルゴリズムを実装するとともに、代表的なMANETのプロトコルとの相性の検証を行う。 平成26年度にはACMの計算幾何学国際会議(SOCG)を日本で開催する招致をし、そのサテライトワークショップで、本研究テーマに関する研究成果を発表する。また、動力学的データ構造に関する若手の俊英であるMarcel Roeloffzen研究員を短期招聘し、共同研究を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
海外研究者を複数招聘する予定であったが、4月のHalldorsson教授はワークショップの招待講演者として招聘したため、ワークショップの全体経費を利用し、本研究費を使用しなかった。また、他にも複数の招聘を予定していたが、ドイツダグスチュールで、多くの研究者の参加するワークショップが開催されたため、徳山がそれに参加する形での研究打ち合わせに切り替えた。また、本研究に関連深いALGOSENSOR国際会議に参加予定であったが、学務のため参加できなかったため、次年度に繰越した。 招聘に関しては、下記使用計画にあるように、若手の俊英研究者を平成26年度に招聘することとした。 オランダEU Einthoven 大学の若手研究者であるMarcel Roeloffzen研究員を1か月招聘し、共同研究を行う。そのための招聘旅費、滞在費に使用する(50万円)。また本研究テーマに関する研究者が集まるSOCG2014国際会議開催にあたる経費(自らの会議参加出張旅費、準備のための出張旅費、研究に協力する学生の派遣や、会議中に開催する打ち合わせ会議経費など)に使用する(40万円)。
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Research Products
(6 results)