2012 Fiscal Year Research-status Report
疑似平方数に基づいた高速な確定的素数判定アルゴリズムの開発
Project/Area Number |
24650007
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
神保 秀司 岡山大学, 自然科学研究科, 講師 (00226391)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 素数判定アルゴリズム / 疑似平方数 / カーマイケル数 |
Research Abstract |
研究目的に挙げた Lukes らによる疑似平方数に基づいた素数判定についての定理1では、与えられた奇数を8で割った余りが1と5の場合に追加の判定条件が必要となる。前年度からその追加判定条件を省いたとき素数と判定されてしまう合成数はすべてカーマイケル数だろうという予想を立てている。 今年度もそれについての実験を継続し、その時点の成果を2012年9月上旬に開催された第11回情報科学技術フォーラムで発表した。この研究が素数判定アルゴリズムの開発に与える影響は不明であるが研究の基礎固めとしての役割は果していると考える。 また、今年度から素数判定も含めた離散数学上の問題に対する整数計画ソルバの活用の有効性に注目している。整数計画ソルバについては、近年そのソフトウェア性能の著しい向上が続き、さらに、学術的な用途に限れば、現在最先端の整数計画ソルバを極めて安価に利用することができる。 今年度中にそれを素数判定アルゴリズムの開発に活用することはできなかったが、2013年3月上旬に開催された第75回情報処理学会全国大会である種の格子グラフにおける最小支配点集合問題への整数計画ソルバの応用について発表した (神保・香西「整数計画ソルバーを用いた囲碁における連数最大値探索の効率化」)。次年度中に開発段階のプログラムで機能の一部を整数計画ソルバに肩代りさせて開発を容易にすることも視野に入れている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
素数判定アルゴリズムの開発のための計算機の活用手段として整数計画ソルバの活用が有効であると考え、それをグラフ理論の問題 (格子グラフについての最小支配点集合問題)に応用する研究に労力を割いた。 また、Lukes らによる疑似平方数に基づいた素数判定条件では、与えられた奇数を8で割った余りが1と5の場合に追加の判定条件が必要となるが、前年度からその追加判定条件を省いたとき素数と判定されてしまう合成数はすべてカーマイケル数だろうという予想を立てている。今年度もそれについての実験を継続した。これら2つの課題についての研究が素数判定アルゴリズムの開発に与える影響は不明であるが研究の基礎固めとしての役割は果していると考える。 予備実験の段階で疑似平方数 L_p の良好な上界の計算が想定していたよりも困難であることが予想され、上記の2つの研究課題に注力し、本来の疑似平方数 L_p の上界の探索についての計算機実験が進展しなかった。 現在、Bach の理論を直接離散的な形で展開することは、該当論文およびその周辺の範囲では困難であり、より多くの文献調査と情報収集が必要であると判断している。素数判定に結び付くプログラムの開発は2013年末までに着手したい。
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Strategy for Future Research Activity |
疑似平方数 L_p の精密な上界の探索について、次年度の初期に比較的高性能な汎用ワークステーションを導入し、学内の既存の計算設備と合わせて集中的に探索プログラムを実験する。その中で得られた有力と考えられるヒューリスティクスを取り入れたプログラムを学外の大規模な計算機環境で動作させる実験を次年度前半の半ばまでに開始し疑似平方数 L_p の十分良好な上界が得られた後国内学会の研究会で発表する。 予想値に近い L_p の上界を求めることは、その予想の信憑性を高めるが素数判定アルゴリズムに直接応用することはできない。現在、Bach の理論を直接離散的な形で展開することは、該当論文およびその周辺の範囲では困難であり、より多くの文献調査と情報収集が必要であると判断している。以下に挙げる研究集会の内のいくつかへの出席を検討している。 情報処理学会アルゴリズム研究会 (年5回開催) / 電子情報通信学会コンピュテーション研究会 (年7回開催) / 第12回広島仙台整数論集会 (2013年7月16日(火) ~ 7月19日(金))・広島大学理学部 (東広島キャンパス) / 代数的整数論とその周辺 (2013年12月9日(月)~2013年12月13日(金))・(京都大学数理解析研究所 (研究集会)) / 計算理論とアルゴリズムの新潮流 (2014年1月28日(火)~2014年1月30日(木))・(京都大学数理解析研究所 (研究集会)) / 計算機科学における論理・代数・言語 (2014年2月17日(月)~2014年2月19日(水))・(京都大学数理解析研究所 (研究集会))。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
学外の大型計算機環境を使用しなかったことと研究の遅延により研究発表の出張回数が少なかったことの為当該研究費 313,028円 が生じた。次年度の研究費の使用について、以下の通り計画している。 主に今年度の課題であった疑似平方数 L_p の精密な上界の探索のための汎用ワークステーションの購入 (約45万円)、その計算を学外の大規模な計算機環境で実行するための計算機使用料 (約25万円)、情報収集のための国内の学会や研究集会への出席および研究発表 (5回程度、約25万円)、図書および資料の購入。
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