2013 Fiscal Year Research-status Report
疑似平方数に基づいた高速な確定的素数判定アルゴリズムの開発
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24650007
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
神保 秀司 岡山大学, 自然科学研究科, 講師 (00226391)
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Keywords | 素数判定アルゴリズム / 整数計画ソルバ / 疑似平方数 / グラフ理論 |
Research Abstract |
前年度から取り組んでいる素数判定も含めた離散数学上の問題に対する整数計画ソルバの活用については、グラフ理論において代表者らが定義したオイラー・グラフの指標であるオイラー回帰長についての研究において重要な役割を果している。オイラー回帰長は、正整数の値をとるが、整数計画ソルバの計算結果を含む証明によりその上界値を1減らすことができた。この結果については、第12回科学技術フォーラム及び平成26年1月開催の情報処理学会のアルゴリズム研究会で発表した。しかしながら、当初期待していた Bach 理論の離散化に基づいた疑似平方数を使った素数判定アルゴリズムの開発への応用の目処は立っていない。 このため、今年度の終わりから巨大な証明付き素数の構成アルゴリズムの開発の検討を開始し、この新課題について次年度に十分な計算機実験が実施できるように平成26年度の終わりに大規模計算用ワークステーションを導入した。確定的素数判定アルゴリズムの重要な直接の応用として巨大な確定的 (証明付き) 素数のランダム生成が挙げられる。しかしながら、確定的素数のランダム生成は、任意の奇数に対して有効な確定的素数判定アルゴリズムを使わないでも可能である。生成した素数 p に対する証明の有力な候補として p - 1 の素因数分解と p を法とした原始根の組を挙げる。この研究において整数計画ソルバが活用できることを期待する。 主に Bach 理論の離散化のための離散数学における代数理論についての情報収集を目的として平成26年2月に京都大学数理解析研究所の研究集会「計算機科学における論理・代数・言語」に出席した。さらに、主にアルゴリズム設計技術についての情報収集を目的として平成26年3月に情報処理学会の全国大会及び電子情報通信学会の総合大会に出席した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
当初の優先的目標であったBach の理論を直接離散的な形で展開することについては、ほとんど進展が観られていない。前年度から強力な道具になると期待されている整数計画ソルバの利用については、主にグラフ理論についての研究では重要な成果が得られたが、直接確定的素数判定アルゴリズムの設計に有効となるものは得られていない。しかしながら、証明付き巨大素数の生成アルゴリズムの開発については、次年度前半に理論及びアルゴリズム設計の両面について進展が期待できると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
Bach の理論を直接離散的な形で展開し疑似平方数を使って実用的なアルゴリズム設計に応用するという当初の研究方針は、文献調査中心の研究として今後も続けたい。この方針の研究については、代数学分野の専門家との意見交流の重要性を痛感している。整数論あるいは代数学に関連する研究集会にも積極的に出席したい。 一方で、平成26年度の研究の中心を証明付き巨大素数のランダム生成アルゴリズムの開発に置く予定である。素数 p に対する証明として p - 1 の素因数分解と p を法とした原始根の組に基づいた木構造を採用する。その木構造は、各素因数にそれが素数である証明を再帰的に適用することにより得られるものである。従来から研究代表者が所属する研究室で専有して使用している計算専用ワークステーションに加えて平成25年度の終わりに新しい計算専用ワークステーションを導入しており、平成26年度の前半はこれらの上でアルゴリズムの開発と計算機実験を続ける。 開発するアルゴリズムには、多くのヒューリスティクスを導入することになるので十分な性能評価をするには、より大規模な計算機環境の利用が望ましい。平成26年度の後半に短期に集中して計算機実験が実施できる大規模計算施設の利用を検討する。必要と判断すれば、新しい計算専用ワークステーションを導入する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
理論研究の進展が遅れていることにより、予定していた研究発表、あるいは、論文投稿などに使用する金額が少なかったことが次年度使用額が生じた主な理由である。 主に年度の後半における集中的な計算機実験のための学外の大規模計算施設の使用、あるいは、新しい計算専用ワークステーションの導入に40から50万円程度を使用する。研究成果の早期の公表のために2回程度国際会議で研究発表することを目標にしている。国際会議の発表論文の校正を外部に依頼するための費用が発生する。また、2、3回の国内の研究集会への出席を予定している。また、理論研究の資料収集の迅速化のためにデジタル情報の購入を予定している。
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