Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は巨大分散システムを分散計算構造の観点から統一的に理解することである. 本年度が最終年度になる予定であったが,一年延長をお願いし, 許可を頂いている. 本年度は, 特に,分子ロボットに対する研究から現れた, 以下に述べる2つの研究を行い, 研究の伸展が予想以上であったので, 上記をお願いするに至った. (1) Population Protocolモデルにおける振動現象の研究:Population Protocolでは, 従来は, 初期状態と十分に時間が経過した後で安定する状態との間の関係を関数として捕らえ, 実現可能な関数の族が検討対象であった. 我々は, Population Protocolを,たとえば, 化学反応のモデルと捕らえて, その時間発展に興味を持って検討した, 特に, 状態が振動する現象に注目し(振動の発生は自律性の発現という視点から興味がある), 環境の変化に従って振幅や周波数が変化するようなPopulation Protocolが存在するための条件,およびそのようなPopulation Protocolを設計する方法をFourier変換を参考にして明らかにした. (2) 3次元的な分散モデルの研究: 本研究の大きな目的は分散問題に現れる情報構造の解析であった. 3次元空間を移動するロボットの研究が本年度の主要なテーマであり, いくつかの成果を得たが, 特に, 3次元空間を移動するロボットの平面合意問題では,回転群の形, 特に, 群と群が作用する点集合が, 合意問題の可解性に本質的であることが分かった. 合意問題を解決するためには対称性の破壊が必要であり, 群こそが対称性を扱う数学的ツールであるから, 上記の結論は自然である. そして, この事実は, 他の分散システムの合意問題にも適用できると思われ, その理論化に着手しようとしている.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
最終年度に課題とした2つのテーマが共に重要であることが, 昨年度の分子ロボット分野の急速な発展と, 申請者の研究の進展によって明らかになってきており, 少なくともこれらの分野に研究の発展の余地を残したことは残念である.
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Strategy for Future Research Activity |
合意問題の困難性の根拠がしばしば対称性破壊の困難性にあることはよく知られていた事実であり, 一方で, 群が対称性を扱う理論であることもよく知られていた. しかし, この2つを結びつける努力はだれもしてこなかった. この着眼点を大切にして, 申請者が今までに検討してきた様々な分散モデルの合意問題を再点検し, 合意問題と群との関連を理論化する.
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