2012 Fiscal Year Research-status Report
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24650010
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
加藤 和彦 筑波大学, システム情報系, 教授 (90224493)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
長谷部 浩二 筑波大学, システム情報系, 助教 (80470045)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | ゲーム理論 / 自律分散システム / 耐障害 / 省電力 |
Research Abstract |
本研究は,広域分散システムにおける拡張性や耐障害性、さらには運用コストの削減を目指し、新たに経済学の一分野であるゲーム理論の成果を基にした自律分散システムの構築を目的とする。特に本研究では、経済活動における提携のモデルとして知られる協力ゲームの考え方を用いて、従来の合意アルゴリズムに代わる新しい動作原理によるシステムを考案することを目標としている。今年度は、目的とするシステムの動作原理を、分散アルゴリズムのモデルの上で確立することを目指して研究を遂行した。 今年度に得られた主要な成果として、目的とするシステムの動作原理の根幹をなす計算機間のプロトコルを構築した。その概要は以下の通りである。まず、複数の物理マシンと、その上で稼働する仮想マシンによって構成される分散システムを想定し、サービスはこの仮想マシン層によって提供される。仮想マシンは全て同一のプログラムのインスタンスであり、どのサービス提供グループの構成要素にもなり得るものとする。さらにゲーム理論の基本概念である「利己的な」動作原理に基づき、各仮想マシンは自律的に自らの利得を最大化すべく、他の計算機と連携して一つのサービス提供グループの構成要素としての役割を担う。各グループでは、前述のように「連携したグループ内での機能維持への貢献度」に応じて、各仮想マシンに報酬が支払われる。すなわち、サービス要求に応えた分だけ、サーバの役割を担う仮想マシンの持つ「口座」に対価が振り込まれ、サーバは一定時間毎にその口座から報酬をグループ内で配分するというものである。また、当初の目的の一つであるシステムの省電力化のアルゴリズムについても研究を進め、その成果を国際会議にて発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
目的とする分散システムの根幹をなす計算機間のプロトコルは、当初予定していた協力ゲームではなく、展開型のゲームとして表現することができた。また、本研究の目的の一つである省電力化のための方法についても、十分な考察を行うことができた。現時点では、耐障害性を実現する上での具体的な方法を確立するところまでは至っていないものの、今年度で得られた成果を基にして、最終的に目標としているシステム全体の動作原理を確立することが期待される。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は、「システム全体への貢献度に応じて各計算機に利得を配分する」という動作原理の確立が主要な課題であった。その実現方法として、本研究では展開型のゲームを基にしたものを構築したが、研究の実施を通じて、資源配分問題を解くためのアプローチとして知られているポテンシャルゲームや、当初の予定である協力型ゲームなど、他にも様々な手法を応用することが考えられる。現時点で完成するところまで至らなかった耐障害性を実現するための動作原理を考える上で、こうした他のアプローチを適用することも検討したい。また平成25年度は、本年度に得られた省電力化の手法を、耐障害性を実現するための動作原理に組み込むことについても着手する予定である。さらに平成25年度の後半では、それまでに確立したシステムの動作原理を、実際のシステム上でプロトタイプ実装し、動作確認や性能評価を行うことまでを実施することを目指したいと考えている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度は、引き続きシステムの動作原理に関する研究を遂行するための文献資料の購入を予定している。また、成果発表のための旅費や、プロトタイプ実装のための計算機利用料への研究費の充当を予定している。
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