2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24650035
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
山口 泰 東京大学, 総合文化研究科, 教授 (80210376)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 視覚情報処理 / 画像処理 / 視覚復号型暗号 / 画質 |
Research Abstract |
復号にあたって計算を必要とせず視覚のみによって秘密画像を見られる拡張視覚復号型暗号は,透明シート重ねると秘密画像が浮かび上がるものなどである.これまで,この拡張視覚復号型暗号で扱われていた画像は,おもに2値画像であった.より正確に言えば連続階調画像を暗号化しようとすると,ハーフトーニングなどの処理が加わるため著しい画質劣化が避けられなかった.本研究では連続階調画像を対象とした拡張視覚復号型暗号をターゲットに,暗号画像自体にも連続階調を利用する新たな暗号化方式を試みる.これにより連続階調のモノクロ画像の暗号における画質改善ばかりでなく,従来はほぼ不可能であった物理的なカラー画像の暗号化も実現できるものと期待される. 平成24年度は 「ハーフトーニングと暗号化の同時並列処理の洗練」ならびに「連続値を用いた暗号化処理」について研究を進める予定であった.まずは2値画像にも共通する前者の同時並列処理の洗練を進めた.ここで処理の洗練とは,具体的にピクセル拡大やコントラスト低下への対応がポイントとなる.たとえばコントラストを上げると,画像間で部分的に矛盾が生じるために,結果画像に他の画像の影響が現れてしまう.この影響は画像の組合せに依存するため,画像の組合せや秘密維持の必要度に応じた適切な画質向上を検討した.この研究を行っている間に複数暗号を埋め込む手法について研究が発展した.すなわち,3枚のシート画像の組合せを変えて重ねることで,1~4種類の暗号画像が得られるような枠組みである.画像の枚数が増えるにしたがって,画像間の矛盾は生じ易くなるために,これらの組合せの影響を測定し,適応的に画質を向上させることに成功した.なお,このため当初予定していた2番目の課題である連続値を用いた暗号化処理については,研究を進めることはできなかった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
【研究実績の概要】にも書いたように,平成24年度は2つの課題にあたる予定であったが,2番目の課題については,あまり研究を進めることはできなかった.しかし,これは1番目の課題に関して,新しいアイディアが得られたこと,また実装・実験によって有用な知見が得られたことによるものである.特に,本研究課題は挑戦的萌芽研究であり,新しいアイディアや方向性が秘められていることを考えると,このような展開は自然とも考えられる.したがって,研究全体としては着実に成果を上げているものと評価している.
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度は,平成24年度に扱えなかった「連続値を用いた暗号化処理」についての考察を進めたいと考えている.連続量を扱うにあたっては,単に白か黒かの違いだけでなく,灰色の濃さや色の再現性などが問題となってくる.すなわち,実際に用いられる透明シートや印刷インクの物理的な特性(光の透過性)などを測定し,計算に組み込む必要がある.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
透明シートや印刷インクの物理的な特性を測定するためには,資料サンプルを作るとともに光度計で透過度などを測定する必要がある.平成24年度には手がけられなかったが,平成25年度には実際に測定作業などを進める予定であり,資料や装置購入のための物品費として利用する予定である.
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