2012 Fiscal Year Research-status Report
高齢認知症者と社会を結ぶ「思い出流通プラットフォーム」の研究
Project/Area Number |
24650037
|
Research Institution | Kyoto Institute of Technology |
Principal Investigator |
桑原 教彰 京都工芸繊維大学, 工芸科学研究科, 准教授 (60395168)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
|
Keywords | コンテンツ / 認知症支援 |
Research Abstract |
① 映像ライフログ評価について,グループホーム「てらど」にて2つの症例に対して実施した.今年度ははまず,患者と家族の絆を再構築するための映像ライフログの利用方法とその効果についての検討を行った.思い出流通プラットフォームの究極の目標は,映像ライフログを映像アーカイブから自動生成することにあるが,この評価においては、映像クリエータが企画、撮影、制作する最高品質のものを提供した.その制作過程や品質について分析し,患者と家族の絆の再構築に最も重要な制作ノウハウを抽出することで、自動生成に向けた知見を得た.患者の症状の改善効果については,NPIなどの精神医学的指標にて評価した.さらに映像ライフログを用いた介護スタッフの患者への理解の深まりによって介護の質がどう変容したか,介護記録などから評価した. ② プラットフォーム実装について,「丹後園」での実証評価を実施した.映像ライフログの制作については,研究代表者による思い出ビデオの自動制作アルゴリズムの相当(思い出の写真のスライドショーに BGM、ナレーションが付与されたレベル)を行った.必要な装置構成としては、患者のアルバムから写真を読み取るためのスキャナ,パソコン,そしてクラウドサービスに流通させるためのブロードバンド通信環境であった.「丹後園」と本学の学生をインターネットテレビ電話で結び,定期的にテレビ電話を用いた遠隔傾聴による介入を実施する環境を構築し,その効果をGBSスケール,NPIなどで計測し有用性を確認した. ③ プラットフォーム運用を介護のルーチンに組み込んだ場合の負担感,あるいは介護の質の変容をその導入前後で比較し,運用方法をガイドラインとしてまとめた.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
映像ライフログ評価,またプラットフォームの実装とも当初の予定通り進捗しており,かつ評価によってその有用性も確認できたことから,おおむね順調に進展していると考える.
|
Strategy for Future Research Activity |
① 映像ライフログ評価については,24 年度は患者と家族の「思い出と今」に着目した映像ライフログを対象としたが,25 年度は「てらど」と地域の交流を記録し,これを患者の思い出と組み合わせた映像ライフログとして患者に提供する.そして患者にとってそれが,地域との交流の記憶定着に効果があるのかを検証する.その後に,制作過程から品質までの各要因を分析し,患者との地域の絆の構築に最も重要な制作ノウハウを抽出することで,自動生成に向けた知見を得る.また「丹後園」に対しても映像ライフログの提供を行う. ② プラットフォーム実装については,24 年度,25 年度に抽出される映像ライフログ制作ノウハウ中で,介護スタッフでの実施が困難で,かつ自動化可能な部分について,映像ライフログ制作支援機能としての実装を検討する.これは下記の③とスパイラルに実施する. ③ プラットフォーム運用については,上述の映像ライフログの映像ライフログ制作支援機能を踏まえて,これを実際に介護のルーチンに組み込んだ場合の問題点を検討する.その結果を上記の実装に反映する.運用,評価は上記②とスパイラルに実施する.また総合評価を行う. ④ 介護の質評価については,上記②,③のスパイラルなプロセスに並行して,これまで蓄積された NPIなどによる評価結果と関連するアーカイブを関連付け,表情検出などによる評価の客観化についての検討を実施する.
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
24年度は映像ライフログ制作について最低で3人の対象者を予定していたが,1名の対象者については体調不良が原因で25年度に延期になり繰越金が発生した.この繰越金は今年度に【その他】映像ライフログの制作などに充当する予定である. 【消耗品費】研究活動に必要な文房具類の購入を予定している.またPC周辺機器としてデータを保存するためのHDD,画像処理ボード類の購入を予定している.文具・ソフト・記録メディアの購入も予定している. 【国内旅費】国内旅費の成果発表は 1 泊 2 日から 2 泊 3 日の旅費約 50 千円,および学会参加費50 千円として予算を計上している。代表者,連携者が年 1 回の国内発表を予定している.よって延べ年 2 回の旅費と 2 回の学会参加費の支出を予定している. 【外国旅費】得られた研究成果を国際的な場で発表していくために、海外旅費として北米や欧州等での 1 週間程度の旅費・滞在費約 300 千円(学会参加費込)として,代表者が1 回の外国発表の費用支出を予定している. 【謝金等】データ投入、メディア試作、評価実験等の作業補助のための謝金を予定している(主に大学院生で 20 日/年×8 千円を想定).また評価等の実験に参加して頂く被験者(主として患者と家族)への謝金を予定している(1 家族 1 回 10 千円×のべ 24 回/年). 【その他】各被験者への映像ライフログ制作、また映像ライフログへのアーカイブ追加作業に必要な予算を計上している(1 家族 200 千円×4 家族/年).
|
Research Products
(4 results)