2013 Fiscal Year Annual Research Report
電光文字表示器による聴覚障害者に対する情報保障方法の指針作成に関する検討
Project/Area Number |
24650048
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Research Institution | Tsukuba University of Technology |
Principal Investigator |
井上 征矢 筑波技術大学, 産業技術学部, 准教授 (80389717)
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Keywords | 聴覚障害 / 電光文字表示器 |
Research Abstract |
1.電光文字表示器に関する意見や要望を聴覚障害者学生50名から収集したところ(自由記述)、急いでいる際に表示が遅いとストレスを感じることや、知りたい情報を見逃すと表示が一巡するまで待つ必要があること、行数を増やすなどして多くの情報を早く取得できるようにして欲しいことなど、表示文を短くし表示サイクルを速めることの有効性を示す記述が約4割でみられた。 2.首都圏の鉄道駅で表示されていたダイヤの乱れに関する情報を72例撮影し、その表示文を「主語 原因 区間・対象 状況・結果」等を羅列した「必要最小限の文言のみ」の表示に改変した場合の文字数と比較したところ、平均で約3.5割短縮することができた。 3.平成24年度に聴覚障害者学生を対象に行った、スクロール表示文を黙読する際の視線の動きとその際の文意の把握度を探る実験を、平成25年度は健聴者学生20名を対象に行った。その結果をまとめると、(1)両群ともに、視線が文字移動方向に徐々に引きずられて大きく戻る、という動きが繰り返される、(2)両群の比較では、視線の停留時間と視線が文字移動方向に移動した時間の割合の平均は健聴者の方が、反対方向に移動した時間の割合の平均は聴覚障害者の方が有意に大きい、(3)視線の移動速度の平均は、聴覚障害者の方が文字移動方向への移動で有意に速い、などの傾向がみられた。聴覚障害者の方が視線が速く引きずられた分、反対方向に戻る時間の割合が大きくなったと考えられる。文意の把握度を探る質問への正答率も健聴者の方が有意に高かった。これらは聴覚障害者がスクロール表示文を読解する際に健聴者以上の苦労を伴うことを示す結果といえる。前述の「必要最小限の文言のみ」とした場合の質問への正答率は、極端に誤答が多かった1文を除くと両群とも通常文と大きな差はなく、文言の取捨選択方法や表示速度を検討することで実用できる可能性が示された。
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