2013 Fiscal Year Research-status Report
国語教材を訓練集合とした機械学習による心情推定方式の研究
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24650061
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
小山 聡 北海道大学, 情報科学研究科, 准教授 (30346100)
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Keywords | 機械学習 / 感性情報学 / 人工知能 / クラウドソーシング |
Research Abstract |
本年度も昨年度に引き続き物語文に対する感情ラベリングの研究を中心に行った。物語文中の登場人物の発言に感情ラベルを割り当てるために、インターネット上で不特定多数の作業者(ワーカー)に仕事を依頼できるクラウドソーシングサービスを利用している。感情ラベリングの問題は、正解が一意には決まらず、しかも複数の解の中でも人々が想起する感情の頻度が異なるため、分布推定の問題として定式化することが自然である。分布の推定は同じ文章を多数の人にラベリングしてもらうことができれば比較的容易であるが、その分コストが掛かる。少ないラベルから分布を推定するためには、ラベルの間の依存関係を考慮することが有効である。例えば、「怒り」と「悲しみ」は共起しやすいが、「怒り」と「喜び」は共起しにくい。ただし、ラベルの全ての組み合わせを考えると、推定しなければならない確率モデルのパラメータ数が大きくなり、データ数が少ない場合には精度の良い推定ができない。そこで、ラベルの間の条件付独立性をベイジアンネットワークで記述し、これを用いてラベルの同時分布を近似することで、少ないラベルから分布を推定する方式を開発した。 また、登場人物の個々の発言に対する感情ラベルは一意には決められないものの、たとえば怒りっぽい人物や気の弱い人物など、同じ人物へのラベルは物語の中ではある程度の一貫性を持っている必要がある。このような登場人物の性格付けに関する一貫性を考慮した感情推定の研究も行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
感情ラベリングをマルチラベル上の分布推定の問題として定式化し、ラベル間の依存関係を考慮して推定するアルゴリズムを提案した論文が国際論文誌に採録が決定するなど、順調に研究成果を挙げていると考えている。また、物語を通しての感情ラベルの一貫性を考慮する問題など、物語文の感情推定という問題における、新しく興味深い研究課題も見えてきている。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでは、物語文の感情推定を全て計算機で自動的に行うことを最終的な目標としてきており、これは従来の人工知能の標準的な問題設定であった。一方近年、「ヒューマンコンピュテーション」と呼ばれる、全て計算機での自動化を目指すのではなく、人間と計算機それぞれが得意な情報処理能力を組み合わせることで、効率よく精度の高い処理を実現するアプローチが人工知能分野で注目を集めつつある。クラウドソーシングを用いた感情ラベリングは、その一例とも捉えることができる。今後両方のアプローチについてその得失を検討して行きたいと考えている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
計算機等の物品費については、今年度はまだ既存物品が使用に耐えていたため、支出額が少なくなっている。 今年度まで使用に耐えてきた計算機を、来年度は更新することを考えており、その費用として使用する計画である。
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