2012 Fiscal Year Research-status Report
マルチエージェントシミュレーションによる再生可能エネルギー導入効果予測技術の開発
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24650067
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
服部 宏充 京都大学, 情報学研究科, 助教 (50455581)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | マルチエージェントシミュレーション / 社会シミュレーション |
Research Abstract |
本研究の目的は、再生可能エネルギーの社会導入と人々のエネルギー消費行動変化が織り成す社会動態を予測するマルチエージェントシミュレーション技術を開発し、シミュレーションを可視化・合意形成ツールとして社会に供する事である。本目的の達成に向けて、本研究では、人々のエネルギー消費行動の計算モデル化を行い、多様なエネルギー消費パターンを組み込んだマルチエージェントシミュレーションの実現を試みる。平成24年度は、人々の節電行動とその伝播を模擬する行動モデルを構築しエージェントに組み込み、社会全体の電力消費の動態を計算するためのソフトウェア環境の開発と、観測現象の検証を行った。 電力消費行動に関する既存研究の調査により、人々の節電行動は局所の相互作用によって変化し得る事が報告されている。本研究ではこの報告に基づき、近傍の家庭の電力消費動向を基に日々の節電行動を刻々と変化させる電力消費行動モデルを設計し、エージェントに実装した。本モデルにより、経時的な節電効果の変化を計算する事が可能となった。電力消費行動の集積計算を行うマルチエージェント電力消費シミュレーションを、既開発のシミュレータの拡張によって実行可能とし、開発モデルを備えたエージェントによるシミュレーション実験を実施した。本実験では、エージェントは、局所の相互作用に加え、実世界で行われる電気予報によって節電行動を変化させるよう設定し、節電率の変化を観察した。その結果、家庭間の相互作用が低節電率の家庭を増加させ得る事、またその状況対して、社会に一様に与えられる電気予報の情報が節電率の低下を抑制する効果は見られたが、その効果も限定的である事が確認できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、個別性を備えたエネルギー消費行動の計算モデル化を、3つの副目標の一つとして設定している。個別性の表現方法については様々な可能性があるのだが、個々の家庭の電力消費に関する十分な量のデータが取得困難な現状では、複数の値を取りうる属性の集合によってエージェントを定義し、属性値の集合の多様性をもって、個別性の多様性を模擬する典型的な手段を取らざるを得ない。本研究では、日本建築学会「住宅におけるエネルギー消費量データベース」のデータ等を基に、複数の電力消費パターンを作成し、当該の目的達成を試みた。平成24年度の研究にて実施した電力消費シミュレーションでは、エージェントの行動パターンの組み合わせによって、異なる現象が観測できることを確認している。このような状況から、副目標のひとつを概ね達成したものとと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画通り、マルチエージェントシミュレーションを可視化・合意形成のためのツールとして社会に供するための技術、およびソフトウェアの開発を継続する。研究開発を進める一方で、シミュレーションを問題解決ツールとして適用可能な実フィールドの開拓も併せて試みる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
シミュレーション用高速計算サーバの購入により,大規模シミュレーション環境を確保する.また,最終年度である事から,本研究の成果に関連した,研究成果発表旅費,ならびに研究成果投稿料を確保する.
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