2012 Fiscal Year Research-status Report
空間的色対比効果と色恒常性効果の両者を生成する統一的色覚メカニズムの解明
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24650109
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Research Institution | Kochi University of Technology |
Principal Investigator |
篠森 敬三 高知工科大学, 工学部, 教授 (60299378)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 感性情報学 / 実験系心理学 / 色恒常性 / 空間的色対比 / 色覚 |
Research Abstract |
本研究の目的は、背景と対象物との空間的色対比効果と人間の色恒常性効果という対象物の色の見えに影響を与える2つの効果が、実は同一機序によって生成されるのではないかという可能性に着目し、2次元の色対比効果とは、直接的な色コントラスト処理による背景の補色方向への色変化ではなく、背景色より導かれる仮想照明光の色(=背景色)に対する色恒常性であるという仮説を検証することにある。 最初の段階として、平成24年度は色恒常性の決定要因を精力的に調べた。色恒常性要因として低レベル処理、すなわち光源に対する光受容体(錐体)順応/錐体信号利得制御(ゲイン・コントロール)、が上げられる一方、視野中の情報から照明空間を認識することで照明光を推定し、これにより物体表面反射率を推定するという考え方も提唱されている。この決定要因の判別により、もし照明認識が重要であれば、2次元での色対比では色恒常性効果が限定的になる一方、低次の順応で決まれば、空間的色対比と同様の機構で処理されている可能性が生じる、ことになる。 実験では、5人の色覚正常な観察者が、モニターの上で非対称同時表面色比較を行った。色照明として4つのテスト光源(緑、赤、青、黄)とD65を使用し、結果が、物体表面反射率と光源分光放射輝度からの理論的算出色、および順応/信号利得制御(完全フォン・クリース型順応モデル)による予測色のいずれになるかを調べた。 結果、緑光源下で順応モデルが比較結果を予測した一方、赤光源下では理論的算出色により予測された。青と黄光源の場合は、順応モデルの予測色と理論的算出色とが非常に近いため、両機序の切り分けは困難であった。この結果は、2つの異なるメカニズムが光源条件によって色恒常性を媒介するために選択的に用いられることを世界ではじめて明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初計画では、直ちに空間的色対比効果と色恒常性効果の比較を行う実験を予定していたが、「概要」で述べたように、より洗練された形での検証実験手法の発見に成功し、かつ、その実験を平成24年度内に一通り確実に実施する事で、学術的に優れた結果を見いだす事が出来たためである。
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Strategy for Future Research Activity |
「概要」で述べた研究成果は学術的に重要であり、国際的に評価の高い2年に一度の学会国際会議(International Colour Vision Society)で発表予定である(平成25年7月)。この発見をさらに拡張するべく、刺激に対する脳内活動をfMRIで測定する事を予定しており、本報告書作成期日において既に実験の準備がほぼ終わっている状況である。それら結果を平成25年度内に学術論文として投稿する計画である。 また当初計画で企画された実験については、上記発見により大きく見通しが立ったため、全体像を精査して今回の新しい手法を取り入れながら、より洗練された形で実施していく事になる。より具体的には、空間的色対比効果が色恒常性効果の影響下にあるかどうかを判定し、仮説の検証を行ため、刺激条件として(A)実物観察条件、(B)通常写真観察条件、(C)(写真上で)物体塗り潰し条件、(D)(写真上で)物体・背景塗り潰し条件の4条件を設定する。このとき(D)以外には3次元空間知覚が生じている。これに対する照明条件として(1) 照明が白色のままの場合(統制条件)、(2) 照明を色光に変えた場合、(3) 照明を色光に変えた上で鏡面反射物で照明色を強く認識させた場合、の3つの照明条件を付加する。この4×3条件での結果の比較から、それぞれの効果の影響を実験的に求める。 さらに、上記2系統の結果を踏まえて、空間的色対比効果及び色恒常性効果の強度を、刺激条件から推定するための経験的モデルを作成しながら、最終的に色対比効果と色恒常性効果を生成する統一的色覚メカニズムを求める。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
何故当該研究費が生じたかについてであるが、「達成度」のところで述べたように、当初計画では、直ちに空間的色対比効果と色恒常性効果の比較を行う実験を予定していたが、「概要」で述べたように、より洗練された形での検証実験手法の発見に成功し、かつ、その実験を平成24年度内に一通り確実に実施する事で、学術的に優れた結果を見いだす事が出来た。そのため、平成24年度の実験とそれに伴う予算執行が、当初の計画とは異なった為である。 (今後の推進方針)に記載したとおり、当初計画で予定した実験は、より洗練した形で平成25年度に実施する事になるため、当該研究費は当初の平成25年度の研究費と合わせて使用することで、研究を実施する計画である。
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Research Products
(6 results)