2013 Fiscal Year Annual Research Report
日米のファンコミュニティにおける野火的なコンテンツ消費のエスノグラフィ
Project/Area Number |
24650127
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Research Institution | Tokyo City University |
Principal Investigator |
岡部 大介 東京都市大学, メディア学部, 准教授 (40345468)
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Keywords | ファンダム / エスノグラフィ / 学習 / 足場掛け |
Research Abstract |
マンガ,アニメなどのコンテンツは,様々な文化間で広く共有されている.従来ドメスティックに消費されてきたコンテンツは,ネットワーク化された社会において,国境を越え,日常的に消費されるようになってきた.Jenkins(2007)によれば,アニメファンコミュニティ(ファンダム)などにおける消費スタイルは「プロシューマー」的であるという.彼らは,コンテンツを視聴する「消費者」でありながら,例えばその映像クリップから私的なアマチュア作品を「生産」する. ファンダムの活動は,「野火」のように広がる活動とみなすことができる.野火的な活動とは,上野(2011)に従えば「分散的でローカルな活動やコミュニティが,同時に至る所に形成され,ひろがり,相互につながって行くといったことを伴った活動」のことを指す.こうした活動における学習は,学校や会社のような制度化された組織内で生じるものとは異なる.組織外における学習は,知識や情報が上流から下流へ移行する「垂直的」な形で表現することはできない.むしろ,コミュニティ,人々,活動の間で「水平的」に学習が構成される. このような議論を背景に,20代の日米アニメファンを対象としたインタビューとフィールドワークから,「野火的活動特有の学習」を分析した.結果,日米のファンダム文化において,SNS等を活用した「足場掛け」(他者が援助し,実行可能にする工夫)による自己発達が見出された.経験のあるファンが,IRC,SNSに投稿する情報に,他のファンが動機づけられ,優れたファンはコミュニティ内で社会的評価を得る.このような構造によって,アマチュアどうしによるピアベースな創造的活動は維持される.さらに興味深いこととして,ファンダムによる小規模・中規模ロットのもつ創造においては,ファンダムの仲間や先人の作りあげた製作物に,自分の「貢献」を少し付け足すことにある点が確認された.
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