2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24650131
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
針生 悦子 東京大学, 教育学研究科(研究院), 准教授 (70276004)
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Keywords | 表情知覚 / 乳児 / 他者特性理解 / 行動予測 |
Research Abstract |
大人は、他者の表情から、その人の現在の快、不快ばかりでなく、その人がその表情を向けた対象にどのような感情を抱いているか、その対象に対して以後どのようにふるまうか、ということまでも読み取る。ところが、このような表情利用能力の始まりをとらえようとする研究は、これまでのところ、子どもはいつから異なる表情を視覚的なパタンとして識別できるのか、カテゴリー知覚できるのか、といった問題への答えを探るところで足踏みしてきた。そこで本研究課題では、乳児を対象に実験を行うことにより、①乳児が(ただ単に同一人物の中で表情が変化したことに気づくというのではなく)異なる人物の示す同種の表情を同じと見なし、ほかの表情とは区別することができるようになるのはいつからか、②それぞれの表情の意味(情動価)に応じた反応を示すようになるのはいつごろからか、をおさえた上で、③表情をその表出者に対する人物評価(好き嫌い)の手がかりとできるようになるのはいつか、④表情をその表出者の行動を予測する手がかりとして使えるようになるのはいつからか、といった問題について明らかにすることを目的としている。 本年度は、①②についてこれまで得られた知見(子どもは生後4か月の時点で既に怒り顔と幸福顔をカテゴライズできている)を論文にまとめ、学術雑誌に投稿した。また、③については、生後4か月、6か月の乳児を対象にした実験をおこない、生後6か月までに子どもは、その人が過去にどのような表情をしていたかを材料に、自分がやりとりする相手を選ぶようになる、との知見を得た。④については実験方法の開発に取り組んだ。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題では、乳児を対象とした実験を行うことにより、3年計画で、乳児における表情知覚(上記①②)、表情を手がかりとした人物評価の始まり(上記③)、表情と行動の因果的理解(上記④)の始まりを明らかにしていく予定であった。本年度までの2年間で、最初の2項(上記①~③)については、一定の知見が得られ、第3項の検討に入るために準備も整いつつある。なお、本年度だけ見れば、これらの知見を学術雑誌や学会で発表するには至っておらず、表面的にはあまり成果があがっていないように見えるかもしれないが、実際には、知見の一部は既に論文にまとめて学術誌に投稿中であり、また、別の部分については平成26年度に開催される国際学会での発表が内定している。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究で得られた知見(乳児による表情カテゴリーの知覚、表情を手がかりとした人物評価の始まり)については、論文を学術雑誌に投稿し、公表していく。また、④表情をその表出者の行動を予測する手がかりとして使えるようになるのはいつからか、といった問題を明らかにするため、乳児を対象とした新たな実験を実施し、知見を得ていく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究成果の発表を、H26年7月にベルリンで開催される予定の、International Congress of Infant Studiesで行うことにしたため。発表申請のためのアブストラクトはH25年11月に提出し、H26年3月にはそれに対する採択の連絡が来ており、発表に向けての実質的な準備はH25年度内に進めてきたが、学会の開催時期がH26年度であったため、そのための旅費は次年度に持ち越すこととなった。 研究成果の発表を行うための国際学会への参加費用として使用する。
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