2012 Fiscal Year Research-status Report
自己と他者の認識が感覚情報処理に与える影響―社会性と知覚の接点―
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24650143
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
山本 慎也 独立行政法人産業技術総合研究所, ヒューマンライフテクノロジー研究部門, 主任研究員 (90371088)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 認知科学 / 神経科学 |
Research Abstract |
我々の脳は様々な感覚受容器から受ける複数の感覚信号を、適切に統合し、また分離する。一方、我々の脳は自己と他者を区別して認識する。前者のような、いわゆるベーシックな感覚情報処理と、後者のような、より認知的な過程が、どのように相互作用するのかを解明することが、本研究計画の目的である。当初の仮説は、『自己と他者という別々の信号源から発生した2種類の感覚信号は、脳内で分離して処理される傾向にある』というものであった。本年度、さまざまな実験を試行錯誤した結果、さらに一般的な事実として本年度は「外界における信号源の単一性に応じて、情報が統合されるか分離されるかが、切り替えられる」という発見をすることができた。これは、左右別々の手から発生した2種類の感覚信号(視覚および触覚)の時間順序判断の実験系によって、行うことができた。さらに申請者らは、自己と他者の別々の信号源から『同時性』の判断をした場合、同時性の窓が小さくなるというプレリミナリーな結果を得た(北米神経科学会にて発表)。今後さらに条件を絞り、その本質を見極めていく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は「外界における信号源の単一性に応じて、情報が統合されるか分離されるかが、切り替えられる」という大きな発見をすることができた。我々はこれまで、視覚と聴覚のような2種類の信号の時間差を、無視するタイプの知覚順応(ラグアダプテーション)と、協調するタイプの知覚順応(ベイズ較正)の2種類があることを解明してきた。前者は情報の統合、後者は情報の分離に対応すると考えられてきたが、「これら2種類の知覚順応がどのように切り替えられているのか」に関しては、全く未知であった。今年度は、この問題に答えることができたが、この発見が、さらに、自己や他者という高次の認知と感覚情報処理の相互作用の本質につながると期待している。
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Strategy for Future Research Activity |
現在、「外界における信号源の単一性に応じて、情報が統合されるか分離されるかが、切り替えられる」という本年度の成果を論文投稿準備中である。今後、自己の左右の手で行った実験と、自己や他者という状況で行った実験の、相違点を明らかにして行きたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度は、前年度発見した現象をもとに、十分な数の被験者を用いた心理実験を行い、充実したデータを得、それらの結果の成果発表を目指す。そのために、被験者謝金、心理実験遂行上生じるラニングコスト、成果発表のための費用を支出する。さらに、前年度立ち上げることができた動物実験の実験系を用いて、生理実験を遂行するが、そのラニングコストも支出する予定である。
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