2012 Fiscal Year Research-status Report
宇宙の過去を復元するデータマインニングと統計的因果推論の探求
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24650145
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | Iwate University |
Principal Investigator |
花見 仁史 岩手大学, 人文社会科学部, 教授 (00212150)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
吉森 久 岩手大学, 工学部, 准教授 (40322961)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | データマインニング / 統計的因果推論 / 銀河形成 / 観測的宇宙論 / 進化系藤樹 / ヒューリスティック / フレーミング効果 / 限定合理性 |
Research Abstract |
1.可視多色撮像画像で検出した10万個の銀河の多波長データベースを更新し、これらのデータベース銀河について、可視・近赤外測光スペクトル解析による赤方偏移、星質量、星形成率(可視)、ダストによる吸収(可視)などの信頼性の高い、以下の結果を得た。(1)星形成率は星質量にほぼ比例する。(2)過去に遡ると、星形成率は大きく、吸収は小さくなる。 2.これらの中で、赤外線観測衛星「あかり」で検出されたおよそ1000個の赤方偏移z=0.4-2の明るい赤外線銀河を、ダストスペクトル解析によって、星形成銀河、活動的中心核銀河、星形成+活動的中心核銀河の3つの種族に分類し、以下の結果を得た。(1)活動的中心核銀河、星形成+活動的中心核銀河については、その巨大ブラックホールが潜むダストで覆われた中心核の活動を捉え、その質量膠着率とその成長率を換算した。(2)星形成+活動的中心核銀河についても、銀河中心核の寄与を除いた赤外線光度から星形成率を導出した。それらは、z<0.8では、明るい、やや暗い、暗い星形成銀河のいずれの星形成率と比較しても,抑制されていた。 3.星形成銀河について、可視・近赤外域と中間赤外域でのスペクトル解析のそれぞれから独立にダスト吸収を換算した。その進化は、星から放出される重元素が蓄積される銀河の化学進化として理解できた。しかし、(1)前者に対して後者は、定量的には、平均的に3倍程度大きい。(2)前者に対して後者が大きいほど、PAH光度に対する硅素ダストの吸収による減光効果が大きい。(3)この硅素ダストの吸収による減光効果と銀河全体の平均的PAH輝線表面光度との相関は顕著ではないので、吸収(可視)と吸収(赤外)の差は、銀河の星とダストの分布の非一様性=内部構造が反映していると示唆された。 以上の結果は、PASJ,2012,No 64, 70に出版、報告した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
概要に報告したように、2012年度中にほぼ銀河データベースの更新を済ませ、それに基づいて、「宇宙論」「銀河天文学」の学術的視点に基づく物理モデルを介して、銀河分類とその進化過程を再構築した。 しかしながら、この銀河進化の再構築は学術的には正当なものであるが、データマインニング、あるいは、統計的因果推論の立場からは、あくまで「宇宙論」「銀河天文学」研究者、あるいはその集団の「ヒューリスティック」なモデル選択の結果に左右された結果とも見なせる。したがって、このモデル選択におけるフレーミング効果、限定合理性の影響を精査する試みとして、すでに概要の2で物理モデルにより分類した明るい赤外線銀河について、それらのダストスペクトル形状のデータを用いて、クラスター分析による分類を行った。この物理モデルを介さない分類でも、赤方変位を限定した範囲ではあるが、物理的モデルに基づく星形成銀河、活動的中心核銀河の2つのタイプへの分類をほぼ再現できた。さらに、形態的特徴量として、銀河の中心集中度との対応との比較をしたところ、物理モデル、クラスター分析のどちらでも、活動的中心核銀河的と分類されたものの中心集中度が高いことが確認された。このように、銀河分類については、データマイニング的手法が従来の物理モデルを用いる手法を検証することはできそうである。 一方で、銀河進化についての統計的因果推論に繋げるには、単なる分類ではなく、銀河同士の類似度を計量化に用いられる特徴量の情報抽出とそれらの赤方変位に従う順列化に適したデータ空間のモデル化が求められる。また、中心集中度以外の形態特徴量による分類などは整理できなかったので、、データ空間のモデル手法の開発とともに有効な形態特徴量を見いだすことが今後の課題となる。
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Strategy for Future Research Activity |
1.形態カテゴリー別にスペクトルから得られた物理量の相関を見ていき、そのままでどんな傾向があるか、特に、その中心核と星形成の活動性と形態との関係に注目して見ていく。カーネル法を導入して、データに隠れた構造がないかを探るデータマインニングを試みる。初期段階での古典的な手法により見えてきたスペクトルと形態との間の傾向があるなら、それをカーネルの設計に取り入れる試みを行いながら進める。 2.赤外線光度の違いによる選択バイアスの評価:10万個の深宇宙の銀河(赤外線銀河を含む)について、赤外線光度によって、明るい赤外線銀河、やや明るい赤外線銀河、暗い赤外線銀河、赤外線検出されなかった銀河に層別化して、その選択バイアスの効果を調べる。さらに、共変量シフトの手法で、1-2)の明るい赤外線銀河を訓練データとして得られた結果を、一般の銀河によってテストすることを試みる。 3.スペクトルと形態のデータ融合:銀河の星-ダスト-ブラックホールの情報抽出がさらに効果的な統計的因果推論の手法を、1)、2)の知見を反映させて、探求する。 4.研究経費は、主に、以下の5つの項目に使われる。(1) 統計的因果推論を適切に導入、適用するために、その原理面での概念整理とともに、解析手法の設計とそのプログラムへの実装を進める。そのために、複数回の関係の研究者との勉強会、研究打ち合わせを行う。(2) 研究協力者のRujopakarn がarXiv1107.2921 で提案した赤外線銀河の電波像の大きさと星形成率の関係則を確認するためのMERLIN/VLA による観測をはじめとして、「あかり」が検出した原始銀河候補天体の追観測など行う。 (3) 2012年度に実装したサーバーの拡張記憶媒体など導入。(4) 研究分担者の吉森が指導する大学院生5名は、データベース管理補助とともに、典型的銀河種族カタログを作成する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
繰越金が発生しないので、該当しない。
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Research Products
(6 results)