2012 Fiscal Year Research-status Report
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24650148
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
吉田 朋広 東京大学, 数理(科)学研究科(研究院), 教授 (90210707)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 統計数学 / 解析学 / 非同期共分散推定量 / リード・ラグ / 非同期観測 / 共分散 |
Research Abstract |
本研究では,金融における相関構造を新しい統計技法によって解析する.非同期共分散推定法 (Hayashi and Yoshida, Bernoulli 2005) により,株や通貨間の相関構造を大規模データから見出し,構造の時系列としての性質,安定性,予測可能性を調べることを目標としている.HY推定量は概念的に,異なる銘柄に対応する時系列の間における時間の相対化を可能にした.U過程とは,HY推定法を基礎に,さらにこの相対性を計量するために定義された確率場のことである.U過程を介し,企業や通貨間のリーダー/フォロワー関係を表現するlead-lag indexを提案したが,その統計的性質,構造安定性の研究を進めた.データ解析のためのソフトウエアの準備など,実データを扱う環境の再構築を行っている. 非同期共分散推定問題において問題となるのは,非同期性の克服はもとより,金融高頻度データに特有のマイクロストラクチャーの取り扱いである.近年マイクロストラクチャーを真の価格過程への加法的ノイズとしてとらえ,プレアベレージングによるノイズ除去の方法が世界的に盛んに研究され,プレアベレージしたHayashi-Yoshida推定量が,決定論的に知られている最適収束率を達成することが証明されている.マイクロストラクチャーの問題へのアプローチは,それをノイズとして扱って除去するのが上記のように一つの方向ではあるが,最近マイクロストラクチャーも包含して高頻度データの構造をモデリングする研究が始まっている.本研究においては,強度過程がリード・ラグ関係を持つ点過程によってこの問題を定式化し,その数学的解析を行っている.さらに,実データから得られたU 過程のパスの形状を再現するmulti-lag model により,lead-lag の重層構造をも解析している.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
多数の銘柄間のリード・ラグ関係を計算し,その時系列構造を解析する課題に関して,GUIの開発を行っていた研究者の異動にともない,計算システムの再構築の必要が起きた.我々が別途開発中である大規模Rソフトウエアに関連する機能を持たせ,システム開発を行っている.これはそのソフトウエアの増強をもたらし,確率微分方程式の統計解析およびシミュレーションに関する多くの機能群の援用と,相互の協力による全体の機能の増強に役立っている. 別の要因としては,マイクロストラクチャーのモデリングという,計画より一歩踏み込んだ研究に着手したことである.マイクロストラクチャーは従来,efficient priceに加法的ノイズを考えるのが多くの研究でなされてきたが,最近マイクロストラクチャーをノイズと考えず,株価の微細構造の反映という立場でモデリングが始まった.点過程を使った表現が微細構造を表現するのに役立ち,Epps効果などの現実データで起きる現象を再現できることがわかってきた.本研究では,この本質的なモデリングの可能性を探り,現象の解明および新しいリード・ラグ指数の研究をしている.その解析的な性質を調べている.このテーマの研究は研究計画の遅れを招いたというより,本質的な発展方向の発見という意味でむしろ意義があったと思われる. また,非同期観測下でのボラティリティのパラメトリック推定という,これまで技術的に困難であった問題に踏み込み,新しい結果を得ていることは関連した貢献であると思う.
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Strategy for Future Research Activity |
基本的な計画に沿って,とくに基礎理論部分の完備を目指したい. データ解析のための専用ツールの開発は課題である.データの切り出しや統計量の計算が容易に,しかも組織的に行えるツールは,データに潜む構造の発見のために重要である.lead-lag indexとU 過程の統計的性質,以前提案しているlead-lag indexの安定性と有意性を調べ,その時系列構造のモデリングと検証を行う.推定値の漸近的性質に関して数理統計学的解析を行う.点過程に基づくマイクロストラクチャーを包含するモデリングを行い,新しいlead-lag indexの統計的性質を解析する.漸近挙動を与えることを目標とし,実データへの適用によってそのパフォーマンスを実験する. multi-lag model とU 過程に関して,実データから|U| のパスを描くと,極大点が複数現れる.U パスの形状は幾つかのパターンに分かれ,それらを再現できるmulti-lag model への一般化を考える.非同期共分散構造推定の応用として,株銘柄/通貨間の共分散構造を非同期共分散推定する.関係の理解のためにグラフィカルモデルで表現を与える.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
マイクロストラクチャーのモデリングに関する情報を収集し,研究遂行のために,出張あるいは研究者の招聘による情報交換を行う.専門家からの情報を収集し,データ解析に必要な人的資源を謝金で確保する.研究成果を積極的に公表して行きたい.
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Research Products
(3 results)