2014 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
24650154
|
Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
田中 博 東京医科歯科大学, 難治疾患研究所, 教授 (60155158)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
Keywords | 上皮間葉転換 / がん転移 / 遺伝子発現プロファイル / Waddington地形 / ARACNe |
Outline of Annual Research Achievements |
がんの転移の基礎過程である上皮間葉転換(EMT:Epitherial-MessenchymalTransition)は、生物学的に基本的な過程で、初期発生の原腸陥入の機構でもある。本研究では、発生学分野で細胞運命を表現するWaddingtonエピジェネティク地形(以下「W地形」と略す)を定量化して、定量化W地形の上で、がん転移過程を示すEMT過程がどのようなアトラクターを描くか検討した。方法は、細胞状態の状態空間内に、遺伝子発現プロファイルの多次元頻度分布をデータベースから作成し、その負の対数変換によって準ポテンシャルを求め、定量化W地形とした。 この地形上に、慶応大学の高橋らのEMTの実験結果を表示した。高橋らの実験は、網膜色素上皮細胞にTGFβおよびTNFαを加えることによってEMTを起こす実験で、その遺伝子発現プロファイルを0,1,6,12,24,42, 64時間後にわたって観測したものである。 まず細胞状態空間の次元数が膨大であるので、主成分解析を行い、第1・2成分をxy座標として、準ポテンシャル表示を行い、高橋らのがん転移EMTの軌跡を検討した。定量化W地形には、3つの安定した状態が観測され、最初の安定状態は、上皮細胞状態で、最後の安定状態は間葉細胞状態であったが、中間的状態も安定状態であり、EからMへの臨界転移状態と認識された。 さらに、このEMTの遺伝子発現プロファイルの時間経過に遺伝子発現調節ネットワーク(GRN)推定アルゴリズムARACNeを適用し、さらにマスター調節因子分析(MR)を適応したところ、中心的なMRとして、初期にはTCF3、転移期にはZEB1、後期にはSMAD1が主MRとして活動し、またβカテニン(CTNN1)も加わった基幹調節因子ネットワークが中心となってEMTが促進されることが分かった。
|
Research Products
(1 results)