2013 Fiscal Year Research-status Report
分子のキラリティが生み出す神経系の非対称性:メカニズム解明と分子工学的制御
Project/Area Number |
24650163
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
玉田 篤史 新潟大学, 研究推進機構, 准教授 (60270576)
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Keywords | フィロポディア |
Research Abstract |
神経系は構造的にほぼ左右対称であるとされるが、ヒトで言語中枢が左半球優位であるなど機能的には非対称である。申請者は「神経系の非対称性の根源が分子のキラリティにある」との新規概念を提唱する。本研究では、「アクチンフィラメントの右巻き二重らせん構造とミオシンVモーターのキラルな分子構造が、アクトミオシン系の左らせん運動を発生させ、それが成長円錐フィロポディアの右ねじ回転運動を駆動し、それが神経突起の右旋回運動を発生させる」という仮説を立てて検証する。さらに、分子のキラリティを改変し非対称性を制御することに挑戦する。本研究は、分子構造のキラリティが細胞レベルでの非対称性として創発する機構を明らかにし、最終的には回路レベル・高次機能レベルの左右非対称性の形成機構解明につなげるものである。 本年度の研究では、昨年度に作成した改変ミオシンV分子を神経細胞に発現させて、成長円錐の微分干渉観察法による3次元タイムラプスイメージングを行い、その運動の可視化を試みた。ところが、陰影がついて疑似立体的に見える微分干渉像が立体構築に適さず、輝度情報をベースとした画像解析の手法が適用できないことが判明した。そこで、この問題を克服するために、ヒルベルト変換の一種であるリース変換を適用して陰影を除去した画像を得る方法を新規に開発した。さらに、オプティカルフロー法により成長円錐の直線運動および回転運動を数値的に解析する方法を開発した。今後、これらの手法を用いて分子構造と運動特性の因果関係について詳細に明らかにしていく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
前述のとおり、当初の計画では、昨年度に作成した改変ミオシンV分子を神経細胞に発現させて、成長円錐の3次元タイムラプスイメージングを行い、その運動を可視化できるものと想定していた。しかし実際に微分干渉法を用いて撮影してみると、一平面であれば鮮明な画像を得られるが、それを立体的に重ね合わせると意味をなさない画像になってしまうことが判明した。そこで、本年度は、当初の計画を修正し、まず、この技術的問題を克服することに注力した。その結果、微分干渉像から陰影を取り除いて立体的に重ね合わせが可能な画像変換法を開発するに至った。
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Strategy for Future Research Activity |
上記のように、本年度の研究により、リース変換により微分干渉像から陰影を除去した画像を得る方法、ならびに、オプティカルフロー法により成長円錐の直線運動および回転運動を数値的に解析する方法を確立した。今後、これらの手法を駆使して、当初の研究目的である分子構造と運動特性の因果関係について詳細に明らかにしていく予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当該課題遂行のため、画像解析の改善に取り組んだが、その方法論確立に予想を超える時間を要した。結果として予想を上回る解像度を有する画像が得られることを明らかにしたが、現在論文作成中であるため、変異ミオシンV導入による解析の経費が未使用額となった。研究期間を1年間延長して解析を行う。 変異ミオシンV導入によるフィロポディアの動的変化を、今回確立した新規の画像処理技術で解析し、当初の仮説の可否を確認する。これらの実験を行う経費、及び成果発表に関する経費を次年度に行うこととし、未使用額はその経費に充当する。
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