2012 Fiscal Year Research-status Report
異なる経験情報をコードする各神経細胞群を同一個体内で同定・活性制御する新技術開発
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24650164
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
大川 宜昭 富山大学, 大学院医学薬学研究部(医学), 助教 (80416651)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 神経活動 / レンチウイルス / 記憶 |
Research Abstract |
c-fos-tTAマウスは、神経活動依存的に転写因子tTAを発現誘導すること、TRE-TVAマウスは、tTAの発現依存的にドキシサイクリン非存在下でTVAを発現することが既に報告されているため、これらをかけ合わせて作製する新規c-fos-tTA x TRE-TVAマウスでは、神経活動依存的にドキシサイクリン非存在下でTVAが発現誘導されることが予想された。EnvAをエンベロープに持つ組み換えレンチウイルスは、TVA発現細胞に特異的に感染しトランスジーンを宿主細胞ゲノムに組み込むことから、本年度は、これらの融合により特定のイベント経験時に活性化した神経細胞特異的遺伝子導入法の確立を目的として研究を行った。 人工授精・胚移植により実際にc-fos-tTA x TRE-TVAマウスを作出した。イベント特異的な神経活動履歴を持つ細胞標的化のために、ドキシサイクリン除去のタイミングの検討を行うとともに、電気痙攣刺激と新規空間暴露による神経活動誘導によりTVAの発現動態様式を観察し、イベント特異的にTVA発現細胞が出現する条件を確立した。さらに、複数回の時間的に離れた2つのイベント時に活性化した細胞を標的化するためのドキシサイクリン除去・添加時期を検討し、各イベントに対応しTVAを発現誘導できる条件を確立した。 この条件下で、c-fos-tTA x TRE-TVAマウスへの同一時期の電気痙攣刺激と新規空間暴露により神経細胞を活性化後、この刺激で活性化する海馬と扁桃体へGFPかRFPいずれかの蛍光タンパク質発現を誘導するEnvAウイルスの感染を行った。これにより、神経活動履歴を持つ細胞の標的化が、GFPもしくはRFPの発現により確認された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
複数回のイベント経験に対応し活性化した各細胞群を異なる蛍光タンパク質で標的化することを目標としているが、現在その基盤が確立できつつあるため。
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Strategy for Future Research Activity |
文脈性恐怖条件付け学習において、条件刺激(CS)と即時無条件刺激(US)への時間差での暴露は、それぞれ主に海馬と扁桃体に経験をコードする回路を構築する。さらに、両回路の連合がCS特異的な恐怖記憶を成立させる。c-fos-tTA x TRE-TVAマウスへのCS、US提示後、それぞれGFP、RFP発現EnvAウイルスを海馬と扁桃体へ感染させ、CS、USそれぞれ、または両刺激に応答し活性化した細胞群の同定を図る。さらに、CSへの再暴露による連合記憶の想起後に内在性c-Fosタンパク質の発現検出を行うことで、CS提示時、US提示時、記憶想起時という異なる3つのタイミングでの海馬、扁桃体の各脳領域内で記憶成立に関与した細胞群の同定を行う。 上記技術が確立できたとともに結果を確認できたならば、これまで不可能であった3回以上の異なる時期の活性化回路群の同定が達成されたことになる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度、9,866円の助成金が未支出となったが、これは、購入予定であった研究試薬の国内在庫が無かったためである。平成25年度、この研究試薬の購入に平成24年度の未支出金を使用する。 これに加えて、平成25年度は、複数回のイベント後にウイルス注入を行うためのマウスの吸入麻酔機を購入する。また、標的化したイベント時に活性化した細胞を光遺伝学を用いて人為的活性制御するため、光刺激用レーザーを購入予定である。 組み換えウイルス作成に関する試薬、組織化学関連試薬、人工授精関連試薬、そして、実験用マウスを購入する。 日本神経科学会や北米神経科学会(Society for Neuroscience)の年会等に参加し、本課題を取り巻く最新の研究に関する情報収集を行うため、旅費として研究費の使用を希望する。
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