2012 Fiscal Year Research-status Report
単一ニューロン遺伝子発現誘導法による行動の多様性と可塑性を生み出す神経基盤の解析
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24650165
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
谷本 昌志 名古屋大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (30608716)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小田 洋一 名古屋大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (00144444)
高木 新 名古屋大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (90171420)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 神経科学 / 神経行動学 / 神経可塑性 / 遺伝子発現誘導 / 赤外線レーザ / 熱ショック / IR-LEGO |
Research Abstract |
任意の細胞・組織に任意の時期に任意の遺伝子を発現させる技術は、生物学研究を大きく進歩させると期待される。本研究では、脊椎動物の生体組織において赤外線レーザー光を任意の細胞・組織に照射して熱ショックプロモーターを活性化させて遺伝子発現を誘導する手法を発展させて、神経回路機能を解析することを目的とした。 (1)遺伝子発現誘導法の確立 脳深部へ赤外光を導入する微小プローブを準備し、脳ニューロンでの発現誘導の可能性を検討した。熱ショックプロモーター(hsp70)を活性化させた細胞で緑色蛍光タンパク(GFP)が発現する遺伝子組み換えゼブラフィッシュを利用し、赤外光照射によってGFPが発現することが確かめられた。 (2)並列神経回路の構成の解析 脳の神経回路が行動の多様性と可塑性を生み出す原理を導き出すために、魚の逃避運動を駆動する神経回路に注目した。後脳に一対のみ存在するマウスナー細胞は音/振動刺激に対して活動してすばやい逃避運動を駆動すると考えられている。ゼブラフィッシュ仔魚のマウスナー細胞をガラス微小プローブあるいはレーザー照射によって破壊すると最も短潜時のすばやい逃避運動が消失した。しかし、観察された逃避運動は、開始潜時がわずかに長いがその他の運動力学的パラメータ(最大屈曲角度、最大屈曲角速度)には違いが現れなかった。これらのことから逃避運動を駆動するマウスナー細胞を含む並列神経回路の存在が浮き彫りとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
赤外光照射による遺伝子発現誘導によって脳深部の細胞にGFPを発現させることに成功した点で研究は順調に進展していると評価される。また、動物の行動の多様性と可塑性を生み出す原理のモデルとなるゼブラフィッシュの音/振動刺激に対する逃避運動回路の構成についても、細胞破壊実験が順調に進展し並列回路の存在が明らかになった。さらに、標的とする単一細胞においてGFPを発現させることにも成功しつつあり、今後も計画通り研究を進めることで研究目的を達成することができると期待される。
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Strategy for Future Research Activity |
遺伝子組換え系統を活用してGFPのみならず任意の遺伝子の発現誘導を単一細胞において行う。新たな赤外光レーザー光源の制作が進んでおり、出力強度と時間幅の調整が可能な光源を新たに導入してより効率的に遺伝子発現誘導を行う条件を検討する。 マウスナー細胞以外にゼブラフィッシュ仔魚の逃避運動の駆動に関与すると考えられるニューロン群の破壊実験により候補を絞り、遺伝子発現誘導によって光遺伝学的手法で並列神経回路のはたらきを調べる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
出力強度と時間幅の調整が可能な赤外レーザー光源を新たに導入するほか、光ファイバ等の光学用品、生理学実験用品、遺伝子組み換えのための分子生物学試薬類、研究成果の報告や情報収集のための学会参加旅費、論文発表費用等に使用する。
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