2012 Fiscal Year Research-status Report
大脳皮質で最も早く生まれるニューロン群の起源、発生様式と運命
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24650166
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
村上 富士夫 大阪大学, 生命機能研究科, 教授 (20089882)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 大脳皮質 / ニューロン / 起源 / 発生様式 |
Research Abstract |
大脳皮質は我々の精神活動を司る脳の最高位の中枢である。大脳皮質構成する神経細胞は一層からなる神経上皮(NE)から発生するが、近年発生様式の理解が大きく進展した。即ち、NE 細胞の分裂増殖に続き、その後その非対称分裂により神経細胞(N)または basal progenitor (BP)が生じ、さらにそれ自身又は BP の対称分裂によっても Nが生ずるというものである。しかしながら、この考えは主に胎生12.5日目頃のマウスの皮質を出発点として行われた研究によるものであり、さらに早期に神経細胞の産生を示す知見があるにも関わらず、その起源、分裂様式、移動や運命に関する研究は殆ど存在しない。これは主に技術的限界によるものであると思われるが、本研究では これを克服して胎生 10.5 日目まで遡り、NE細胞からの神経細胞の産生とその運命に迫ることを目的とした。 大脳皮質の神経新生は胎生11.5日目位から始まるため(Fairen et al., JCN, 251, 67)、これに先だって胎生 10.5 日目に皮質に子宮内電気穿孔法を用いて神経上皮細胞に GFP 遺伝子を導入した。このような発生の早い時期での子宮内電気穿孔法には高度な技術が必要であったが技術の確立に成功した。また個々の細胞を見分けるため、pCAGGS:Cre と floxed-GFP(pCALNL5:GFP) の混合プラスミドを導入し、pCAGGS:Cre の濃度を調整することによって適度な標識密度を達成するのに成功した。 プラスミド導入の数日後に大脳を観察したところ、標識細胞が脳の表面付近に分布している様子が観察され、これは新たに生まれた細胞が法線方向に移動したことを示している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究遂行のためのには高度な技術が求められるが、技術的問題は既に克服し、すでにデータを取得し始めている。
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Strategy for Future Research Activity |
子宮内電気穿孔法で遺伝子を導入した胎仔を 0.5 日後に取り出し、 皮質のスライスを作製し、共焦点顕微鏡または2光子顕微鏡を用いてタイムラプスイメージングを行う。これにより、胎生 11 日目からの神経上皮細胞の分裂と分化の様式を明らかにする。この 際、リアルタイムで神経細胞の新生を確認するために Tα1-GFP の電気穿孔、doublecortin-EGFP マ ウス(Liu et al., J Cereb Blood Flow Metab., 29, 297)や Tis21-GFP ノックインマウス(Haubensak et al., PNAS, 101, 3196)を利用する。Tis21は大部分のP細胞が産生し、神経細胞に受け継がれると考えられている蛋白であり、新生直後の神経細胞において GFPシグナルが観察される。このような発 生の早い時期でのタイムラプスイメージングには困難がともなうことが予想されるが、本申請者 は脳スライス標本のタイムラプスイメージングでは世界最高水準の技術を有しており、工夫を重ねることで実現可能であると考えている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年度も備品の購入は行わず、予算を全額実験動物を含む消耗品の購入に充てる予定である。
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Research Products
(7 results)