2012 Fiscal Year Research-status Report
記憶アップデートの分子マーカーとしてのプロテオソーム依存性タンパク質分解の有効性
Project/Area Number |
24650172
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture |
Principal Investigator |
喜田 聡 東京農業大学, 応用生物科学部, 教授 (80301547)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 神経科学 / 脳・神経 / 記憶アップデート / 記憶再固定化 / 記憶消去 / 記憶想起 / 記憶固定化 / タンパク質分解 |
Research Abstract |
動物は、獲得した情報を常に独立した記憶として新規保存するわけではなく、新しい情報を既存の記憶に結びつける「記憶アップデート」を随時行っている。しかし、記憶アップデートの分子基盤はほとんど理解されていない。申請者は自らの「プロテオソーム依存的タンパク質分解が記憶アップデートの起点となる」との仮説を検証するため、記憶固定化(新規形成)時と比較しつつ、アップデート時の脳内におけるプロテオソーム依存的タンパク質分解活性とその記憶制御に対する役割を解析した。免疫組織染色法を用いて恐怖記憶固定化時のプロテオソーム依存的タンパク質分解活性を解析した結果、固定化に必須な領域である海馬には、タンパク質分解の活性化は観察されず、また、海馬におけるプロテオソーム依存的タンパク質分解の阻害も固定化には影響を与えなかった。従って、固定化、すなわち、最初に記憶が形成される際にはプロテオソーム依存的タンパク質分解が必要とされないことが明らかとなった。これに対して、記憶再固定化時には、海馬において、プロテオソーム依存的タンパク質分解の活性化が観察され、また、このタンパク質分解の阻害は再固定化を誘導するために必要な「記憶不安定化」を阻害することが明らかとなった。また、記憶消去時にも脳内の複数の領域で、プロテオソーム依存的タンパク質分解の活性化が観察され、また、このタンパク質分解の阻害は消去を阻害することが明らかとなった。以上の結果は、プロテオソーム依存的タンパク質分解は、既に固定化されていた記憶の想起時にのみ活性化されることを示しており、プロテオソーム依存的タンパク質分解は記憶アップデート時に活性化されることを強く示唆するものであった。また、社会的認知記憶、及び、モリス水迷路における空間記憶における記憶アップデート時におけるプロテオソーム依存的タンパク質分解の動態の解析も進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
記憶固定化と比較して、記憶再固定化や記憶消去時にのみプロテオソーム依存的タンパク質分解が活性化されることが示され、また、この活性化が再固定化や消去に必須であることから、本課題の仮説が正しいことが証明されつつあるため。
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Strategy for Future Research Activity |
社会的認知記憶課題では、「新規性」を認識する脳領域の同定も進んでいるため、社会的認知記憶アップデートに対するプロテオソーム依存的タンパク質分解の役割の解析を進め、本課題における仮説の一般性を検証する。プロテオソーム依存的タンパク質分解が誘導されることが明らかになった領野に対してプロテオソーム阻害剤(β-lac)を注入して、記憶アップデートに対するタンパク質分解の役割を解析する。さらに、新規物体認識課題、恐怖条件付け文脈学習課題等を用いて、記憶アップデートの条件を変更した場合のプロテオソーム依存的タンパク質分解の誘導変化に関しても詳細に解析し、記憶アップデートに応じたプロテオソーム依存的タンパク質分解の誘導条件を明らかにする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし。
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Research Products
(24 results)