2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24650176
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
田辺 康人 大阪大学, 生命機能研究科, 准教授 (10311309)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 線条体 |
Research Abstract |
線条体は大脳新皮質や視床との神経回路形成を通じて様々な脳機能の発現に重要な役割を演じる大脳基底核の主要な神経核である(Gerfen, 1992; Kawaguchi, 1997, Nambu, 2008)。線条体を構成する主要な神経細胞(9割以上を占める)である中型有棘細胞(線条体投射ニューロン)は、マウスにおいては外側基底核原基において胎生期10日目から生後0日付近に至るまでの長い期間を通じて産生されることが示されている(Bayer, 1984, Marchand & Lajoie, 1986)。早生まれの神経細胞はパッチ区画構成細胞としてまた遅生まれの細胞はマトリクス区画構成細胞として線条体を特徴づけるモザイク構造を形成する(van der Kooy & Fishell, 1987)。本研究では発生期においてどのようにして線条体を特徴づけるモザイク構造が構築されているのかを明らかにすることを目的とする。初年度においては、それぞれ異なる二種の神経細胞群を生まれのタイミングの違いを利用することで同時に標識し、それぞれの細胞動態を同一切片上で解析するスライス培養系を確立した。そして、パッチ区画構成細胞は脳室帯における神経前駆細胞から発生し予定線条体領域であるマントル層に移動した後の段階においては細胞移動能は減少しほぼ静止状態にあること、また一方マトリクス区画構成細胞はマントル層に移動した後の段階においても継続的に細胞移動能を保持し、多方向への(ランダムな)細胞移動像を示すことを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
初年度においては、パッチ区画構成細胞およびマトリクス区画構成細胞をそれぞれ個別にかつ同時に標識し、それぞれの細胞動態を同一切片上で解析しうるスライス培養系を確立することを当初の目標とした。すでに当初の目標は達成し、さらにそれを用いてそれぞれの細胞動態を明らかにし得たため。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度において我々は、発生過程における線条体は細胞動態の大きく異なる二種の神経細胞が混在した領域から成ることを明らかにした。細胞動態といった力学的特性の違いがどのようにして最終的に異なる区画形成に結びつくのか、またどのようにしてそれぞれの細胞動態自体が調節されているのかが次の解析の焦点として浮かび上がってくる。後者に関して興味ある知見として、内側基底核原基から発生し線条体を経由して大脳皮質へと細胞移動するGABA作動性介在ニューロンの細胞動態が、中脳ドーパミン作動性神経細胞からのドーパミンシグナルにより影響を受けることが報告されている(Crandall et al., 2007)。この結果は胎生期から始まるドーパミン作動性神経細胞の線条体への投射が線条体モザイク構造構築に対しても影響を及ぼす可能性を示唆している。本年度においてはこの可能性を検証する予定である。胎生期におけるドーパミンシグナルの重要性を明らかにすることができるとともに、ドーパミンシグナルの過多、臨床的には母体の薬物中毒が胎児の線条体構築に影響を与える可能性を検証することにつながると考えらえる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本研究はスライス培養系を用いた実験をもとにしており、そのためにスライス培養のための培養試薬およびスライス作成のための動物の購入に研究費を使用する予定である。
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