2012 Fiscal Year Research-status Report
ヒト大脳半球完全連続切片標本に基づきヒト脳を直接調べヒト脳固有の構造を発見する
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24650179
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
福田 孝一 熊本大学, 大学院生命科学研究部, 教授 (50253414)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | ヒトの海馬 |
Research Abstract |
ヒトの脳の組織構造の詳細な解析が実は多くの領域で不十分なままである。本研究はヒト大脳半球の完全連続切片標本を作成し、ヒトの脳だけに見られる組織構造を発見することを目的とする。平成24年度は、特に他の動物よりも格段に高度な記憶機能を支える海馬に焦点を当て、研究を遂行した。 以前に確立した方法(Fukuda et al.,Neurosci Res67:260-265,2010)に基づき、左右に分割した大脳半球の一側から1cm 厚のスライスを正確に作成し、さらに振動刃ミクロトームにより100 ミクロンの厚さの完全連続切片を得た。得られた連続切片にNissl 染色を施し、画像解析ソフトNeurolucida を用いて、連続切片の輪郭と主な内部構造をコンピュータ上でトレースした。さらに高倍率での顕微鏡観察に基づいて海馬体内部の領域区分をトレースに書き込みながら、特に本研究により新たに見いだしつつある海馬体内部の繰り返しユニット構造の位置をプロットする作業を、現在鋭意実行中である。トレースをもとに三次元再構築を行うと、複雑な形状を示すヒト海馬の一般的内部構造全体を明瞭化することが実現する。さらにその組織構築の中に、今回新たな発見として提示するユニット構造がどのような広がりをもって分布しているかを示すことができる。以上と並行して、問題とする繰り返し構造が海馬体内部のどの領域に属するかを正確に同定するために,Nissl標本の隣接切片に免疫組織化学染色を行った。実験動物に比べてヒト脳標本では良好な免疫染色を得ることには困難が伴うが、種々の工夫を加えた結果、海馬の領域区分に有用な免疫染色をヒト脳でも得ることに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度は、以前に作成した個体の標本から予備的に得た新しい構造の知見を確かなものとするために、新しい標本作成を行うことを第一の目標としたが、連続切片作成は順調に進行している。さらに顕微鏡連動型画像解析ソフトの使用により、新たに見いだした繰り返しユニット構造の三次元的マッピングも順調に行っている。加えて、動物に比べその内部構造が格段に複雑なヒト海馬において、以下に客観的に領域区分を行えるかということは重要な課題であったが、さまざまな実験上の工夫によって、ヒト海馬の領域区分を可能にする免疫染色に成功した。以上のように、研究は順調に進行している。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度の研究を引き続き強力に推進し、ヒト海馬に特有の、これまで全く知られていなかった構造の解明を実施する。免疫染色による正確な領域区分を実施し、繰り返しユニット構造の分布と数の定量的解析、さらに嗅内野および前海馬台に存在する既知のユニット構造との量的比較を行い、ヒト海馬に固有の組織構築の提示と詳細な解析を実施する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
超大型切片の作成と保管には特注の器材を必要とする。さらに免疫染色において使用する抗体の量も、実験動物に比べ非常に大きなものとなる。研究費は主にこれらに対する物品費として使用する。
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