2013 Fiscal Year Research-status Report
ヒト大脳半球完全連続切片標本に基づきヒト脳を直接調べヒト脳固有の構造を発見する
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24650179
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
福田 孝一 熊本大学, 生命科学研究部, 教授 (50253414)
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Keywords | 海馬 / ヒト / 記憶 / モジュール |
Research Abstract |
本研究はヒト大脳半球の完全連続切片標本を作成し、ヒトの脳だけに見られる組織構造を発見することを目的とする。平成25年度は、前年度に引き続き海馬に焦点を当て、研究を遂行した。 まず海馬体および海馬体周囲の構造に見いだした繰り返し構造が、当教室のプロジェクトとして進行している、「大脳半球全体の連続切片に基づくデジタル脳アトラス作成」に供している一個体で観察できるだけでなく、ヒト海馬に一般的構造であるか否かを確かめた。即ち、別の二個体の大脳半球で、以前に確立した方法(Fukuda et al.,Neurosci Res67:260-265,2010)に基づき、100 ミクロンの厚さの完全連続切片を得た。その結果いずれの個体でも、現在解析を進めている個体と同様の、顕著な繰り返し構造が海馬およびその周辺領域に存在している事を確認できた。この結果に基づき、昨年度からの詳細な画像解析を継続した。ユニット構造は嗅内野におけるものが有名であり、また前海馬台の構造も知られているが、海馬体内部のものは全く報告がない。その三次元的な分布をデジタル化し、広範囲にわたる立体構成を明らかにする解析を継続した。一方で、齧歯類に比べて格段に複雑な構成をとるヒトの海馬とその周辺領域において皮質野の区分を客観的に行うことが、定量的解析の前提条件となるため、免疫組織化学染色を実施した。ただし理想的な染色条件とはなりえないヒト脳での免疫染色は、当然ながら困難が伴い、一応領域区分の目安を得ることはできたが、確実な結果を記載するにあたっては、研究の継続が必要である。他方、この困難性を克服する一助として、ヒトの大脳半球に近い形態を示すアカゲザルの脳での検討も実施した。その結果、今追究している海馬体内部のユニット構造は、サルではごくわずか萌芽といえるものが認められるものの、やはりヒトにユニークな構造である事を見いだした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
以前に作成した個体の標本から得た新しい構造の知見を確かなものとするために、別のに個体から新たに標本作成を行い、同様の所見があるかどうかを検証した。その結果、以前の分も含めると3個体で、海馬およびその周辺領域に、実験動物では見られない顕著な繰り返しユニット構造が存在している事を確認した。顕微鏡連動型画像解析ソフトの使用により、新規繰り返しユニット構造の三次元的マッピングも順調に行っている。またその内部構造が複雑なヒト海馬における領域区分の妥当性を知る目的で、サルの脳での検討も実施した。 以上のように、研究は順調に進行している。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度は、実験的工夫を重ねながらデータの実証性を得る事ができた現在の研究手法を用いて、データ解析をさらに強力に推進し、質の高い国際雑誌での出版を目指す。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
基金助成金は3年間の研究の遂行に伴い柔軟に支出することが可能であるため、平成25年度の研究における未使用分を次年度使用額に計上した。今年度から追加した新しい個体からの脳の標本作製を次年度に継続するに際して、超大型切片用の特注の機器に費用がかかる見込みであることが、主となる事情である。 ヒトの超大型切片用の特注のスライドグラス、カバーグラス、標本箱などの器材、ならびに超大型切片での免疫組織化学染色で大量に必要となる抗体その他の試薬の購入に充てる計画である。
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