2012 Fiscal Year Research-status Report
母親の高脂肪食摂取が胎児の神経発生と行動に及ぼす影響:発達障害のモデルとして
Project/Area Number |
24650180
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
|
Research Institution | Wakayama Medical University |
Principal Investigator |
仙波 恵美子 和歌山県立医科大学, 医学部, 教授 (00135691)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山野 眞利子 大阪府立大学, 公私立大学の部局等, 准教授 (80192409)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
Keywords | 発達障害 / 高脂肪食 / 過活動 / オレキシン / 社会性 / 超音波発声 / 神経新生 |
Research Abstract |
妊娠6日目~出産まで母マウスに高脂肪食(High Fat Diet:HFD)を与えると、生後8週頃から雄の仔マウスが夜間の著明な過活動と攻撃性を示すことを見出した。母親の高脂肪食により胎児の脳のneurogenesisが影響を受け、生後の行動異常の原因となる、発達障害のモデルと考えられる。本モデルにおいて、Orexinニューロンと過活動、生後発達と超音波発声を指標にした社会性の発達、胎生期におけるneurogenesisという3つの観点から検討を行った。 1.Orexinニューロンの増加と過活動との関係:視床下部外側核のOrexin産生ニューロン数の著明な増加が認められ、Orexin受容体(OXR)の選択的なブロッカーSB334867A (1 mg/mouse, i.p.)を投与すると、過活動が抑制された。 2.生後の発達と超音波発声の解析:超音波により動物は互いにコミュニケーションをとっており、超音波発声は社会性の発達の指標となる。自閉症のモデルとしてHDAC inhibitorバルプロ酸を投与するモデルがよく使われている。胎生11日目にバルプロ酸を母親に与えたモデルも同時に作製し、コントロール群、HFD群で生後の発達を比較したところ、バルプロ酸群、HFD群ではコントロールに比べて体の発育が早く、運動能力も発達し、母仔分離により複雑なパターンの超音波発声がより早期から多く認められた。 3.胎生期のneurogenesisについての検討:胎生早期には神経幹細胞は専ら増殖し、中期にはニューロンに分化し、後期になるとastrocyte への分化が始まる。妊娠中期14.5日目の母親にBrdU(50~100 mg/kg, i.p.)を注射し,4時間後に胎児を取り出し免疫組織染色を施行した。HFD群のマウス胎仔の大脳皮質におけるBrdU陽性細胞数はコントロール群に比べて有意に増加していた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Orexinニューロンと過活動、生後発達と超音波発声を指標にした社会性の発達、胎生期におけるneurogenesisという3つの観点から検討を進め、興味深い結果を得ている。研究代表者、研究分担者、連携研究者の間で密に連絡をとり合い、大学院生2名・学部学生2名の研究協力者を得て、おおむね順調に研究を進めている。
|
Strategy for Future Research Activity |
(1)本モデルマウスでは、夜間に活動量が増えるのに加え、午前8時から9時にも自発運動量が増えるが、この移行期の過活動はOXR1の antagonist では余り抑制されない。そこでOXR2の antagonist を投与して自発運動量の変化を観察する。これらの動物の過活動に、2種のOXRがどのように関与しているかを明らかにする。 (2)母親にHFDを負荷した群とバルプロ酸を投与した群のマウスを、回転ケージ内で飼育し、夜間の活動量、サーカディアンリズムの変化を観察するとともに、オスどうし、オスとメスの接触に伴う超音波発声についても検討する。また、行動実験終了後は、視床下部を採取し、リアルタイムPCRにてOrexin, NPYなどの各種ペプチドのmRNAを定量する。 (3)胎児脳におけるneurogenesisをさらに詳細に検討する。ニューロンや神経幹細胞特異的に発現するタンパク質に対する抗体を用いた多重蛍光免疫染色法により、神経幹細胞の増殖と分化に対するHFDの影響を評価する。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度使用額(688,823円)については、リアルタイムPCR用の試薬、成体・胎児の脳切片における多重蛍光免疫染色法に用いる抗体の購入に充てる。
|