2012 Fiscal Year Research-status Report
蛍光1分子イメージングによるプリオン蛋白重合度の解析
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24650186
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
岩城 徹 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (40221098)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 脳神経疾患 / 痴呆 / プリオン病 / 蛋白オリゴマー |
Research Abstract |
プリオン蛋白(PrP)の重合度はプリオン病の病態形成機序と密接な関連がある。近年の研究によって14-28個のPrP分子(300-600kDa) に相当するオリゴマー状態のPrPは高度に凝集した繊維状PrPよりも感染性や細胞毒性が高いことが示唆されている。そこでPrPオリゴマーを検出し、分子レベルで実際の重合数を可視化するために、蛍光抗体法を用いた全反射エバネッセント蛍光顕微鏡での1分子イメージングを、不純物を含むシンプルな培養細胞系に応用した。マウス神経芽細胞腫N2a 細胞にFukuoka-1株を持続感染させた細胞株を用いて、その未精製の細胞溶解液を分子サイズに準じてゲルろ過スピンカラムで分画し、オリゴマーが多く含まれる分画とモノマーが多く含まれる分画を得た。抗PrP抗体として異常型PrPではエピトープが埋没するドメインを認識するクローン8G8と正常型と異常型の両方のPrPを認識できると考えられるクローンSAF70をアミノ基反応性のfluoresceinで蛍光標識した。調整した抗体を反応させた結果、様々な輝度の蛍光輝点が検出され、明るい輝点は異常型PrPでは特異的エピトープが埋没していると考えられているクローン8G8 よりも、クローンSAF70とオリゴマー分画を反応させた条件で多く見られた。この結果はPrPオリゴマーが適切に検出され異常型PrP分子の構造変化を観察したことを示唆している。TIRFMによるイメージングは病態形成過程におけるPrPオリゴマーの重合状態と特性の決定に役立つと思われる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
サンプル調整から抗体反応、全反射蛍光顕微鏡における輝度評価までの一連の実験を繰り返し、パイロット実験としての条件決めに成功した。蛍光スポットの測定結果をもとにヒストグラムによる分子状態の評価を数理学的に解析する方策も決定した。具体的にはオリゴマー分画で得られたデータを元に横軸に各輝点の強さを縦軸に観察された数を表したヒストグラムを作製した。ついでモノマー分画で観察された結果も合わせて、ガウス分布でモノマー相当部分を設定した。この範囲からはみでたサイズの大きい蛍光スポットを算出し、その輝度とオリゴマー重合度の関連を検討した。以上の成果を国際学術誌に発表した。
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Strategy for Future Research Activity |
今回開発した1分子イメージングによるプリオン蛋白重合度の観察方法と別に我々は遠心カラムを用いたゲル濾過サイズ分画法によりプリオン蛋白オリゴマーを検出する方法を確立して来た。この両者の優劣を考慮すると現状では後者の方が蛋白重合度の変化とプロテアーゼ抵抗性との関連を評価できる利点が大きいと考えている。そこで感染リスクのあるヒトプリオン病脳サンプルにおけるプリオン蛋白オリゴマーの解析は主にゲル濾過サイズ分画法を実施する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究経費は必要な消耗品の購入にあてる。抗体、ゲル濾過カラム、ウエスタンブロッチング検出キットなどの試薬類の購入に使う計画である。
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