2014 Fiscal Year Annual Research Report
逆向きモーター分子ミオシンVIのコンディショナルノックアウト表現型解析
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24650196
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
米田 幸雄 金沢大学, 薬学系, 教授 (50094454)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | ミオシンVI / ミオシンファミリー / 神経幹細胞 / 多能性P19細胞 / PTSD / 神経細胞 / アストログリア細胞 / 細胞増殖能 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題は、細胞内モーター分子であるミオシンスーパーファミリーの一つミオシンVI(Myo6)が、心的外傷後ストレス障害(posttraumatic stress disorder; PTSD)モデル動物海馬において、選択性の高い応答性を示すとの我々のin vivo実験系での研究成果を基盤とする。当該年度は、マウス胚性腫瘍細胞であるP19細胞を用いて、Myo6の安定過剰発現細胞を樹立するとともに、RNA干渉法を利用してMyo6発現抑制細胞を作製して、それぞれのMyo6発現制御細胞の増殖能と分化能についてin vitro実験系にて解析した。その結果、Myo6安定発現P19細胞を浮遊条件で培養すると、細胞増殖能指標である神経塊形成能の低下だけでなく、MTT還元能の抑制がともに観察されたが、細胞傷害の指標であるLDH放出能やPI染色性にはいずれも著明な変化は認められなかった。一方、P19細胞を浮遊培養後に分散してから、さらに接着条件下で培養すると、神経細胞マーカーであるMAP2およびアストログリア細胞マーカーであるGFAPそれぞれに陽性を示す細胞群が出現したが、Myo6の安定強制発現はこれらの細胞分化能には影響を与えなかった。これに対して、siRNAを用いてP19細胞におけるMyo6発現を抑制すると、神経塊形成能およびMTT還元能の著明な増強が誘発されたが、細胞分化能の指標であるMAP陽性細胞数およびGFAP陽性細胞数には著明な変化は観察されなかった。以上の結果から、Myo6は神経幹細胞の分化能には影響を与えずに、増殖能のみを抑制する遺伝子であることが示唆される。生死に関わるような強烈ストレスは、脳内特定領域の神経幹細胞内Myo6発現上昇を介して、同幹細胞増殖能を抑制することが、PTSD様症状発症とその後に観察される海馬萎縮に関与する可能性は否定出来ない。今後、Myo6機能制御を標的として、PTSD治療と予防の創薬戦略が早急に展開されることを期待したい。
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