2012 Fiscal Year Research-status Report
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24650205
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | Tokyo Metropolitan Institute of Medical Science |
Principal Investigator |
藤田 雅代 公益財団法人東京都医学総合研究所, 運動・感覚システム研究分野, 主席研究員 (90415539)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | ドーパミン / マウス / 運動 |
Research Abstract |
ドーパミンは運動の制御に重要な役割を果たしていることが知られているが、ドーパミン完全欠損マウスの運動を解析したところ、L-ドーパ投与中止24時間では確かに運動は抑制されるが、72時間後では、逆に運動量が亢進するという予想外な結果を発見した。 このことは、ドーパミンがなくとも、運動自体は可能なことを示すものと考えられる。そこで、ドーパミンが枯渇した際の運動量亢進が、どのような機序によって発現しているのかを調べるために、様々な神経伝達物質のアンタゴニスト、アゴニストを投与し、運動量にどのような変化が表れるか検討した。すると、非定型抗精神病薬の一つであるクロザピンを投与した際に、L-ドーパ投与中止72時間後の運動量亢進が抑制されることが見出された。 クロザピンは複数の神経伝達物質の受容体をターゲットとするため、どの神経伝達物質を介した作用により強くはたらき、効果を発揮するのかをさらに詳細に検討した。生化学的検討を行ったところ、ドーパミン欠乏マウスでは、線条体におけるコリンアセチルトランスフェラーゼのタンパク質発現が著しく低下していることが認められた。同時に、mRNA発現量の低下も認められた。免疫組織化学により、線条体における発現パターンを解析したところ、コリンアセチルトランスフェラーゼ陽性細胞の減少が認められた。これらの結果と一致して、ドーパミン欠乏マウスの線条体におけるアセチルコリン濃度が野生型マウスに比べて低下していることが、マイクロダイアリシスにより明らかとなった。 以上より、ドーパミン欠乏による運動亢進は、アセチルコリンの減少によって引き起こされている可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ドーパミン欠乏時においても運動自体が可能であることは、新たな発見であり、どのような機序で制御されているかを知ることは、非常に重要なことである。平成24年度は、この機序を見出すことを念頭においた解析を主として行った結果、メカニズムの一つとしてアセチルコリンの減少が考えられるとの結論を導き出すことができた。 もちろん、アセチルコリンのみでは説明のつかないことも多々残されており、今後の継続した研究が必要であるが、今後の発展につながる有用な足がかりであることは間違いないと考えており、現時点において、おおむね順調に進展していると思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの検討でドーパミン欠乏時に運動亢進が起こることが認められているが、どのような運動が可能か、さらに詳細に検討する。具体的には、ホームケージでの行動を観察し、自発的な運動が可能なのか、動き始めた際に制御がうまくいかないために結果として運動量が亢進するのか、観察を行う。加えて、L-ドーパ中止24時間後で運動量が顕著に低下していることから、ごくわずかにドーパミンが残ることが却って運動抑制に関わる可能性を考慮し、各種ドーパミン受容体アゴニストを腹腔、あるいは脳部位別に投与し、投与量に応じてどのような運動変化を引き起こすか解析し、どの部位のどの受容体シグナルがどのような運動を制御するか、検討する。 さらに、アセチルコリン減少のメカニズムの解析も行う。平成24年度の検討により、ドーパミン欠乏時の運動亢進の機序の一つとして、アセチルコリン減少と関わることが見出された。平成25年度においては、ドーパミンの欠乏がなぜアセチルコリンを減少させるか、検討する。免疫組織化学の結果より、アセチルコリン陽性細胞が減少していることが示唆されており、アセチルコリン陽性細胞にどのようにドーパミンが作用することでアセチルコリンの産生を促すのか、あるいは、ドーパミンが欠乏することによりアセチルコリン陽性細胞が細胞死を引き起こして細胞数が減少するのか、両方の可能性を考えて検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度の研究費は、主にマウスの維持、各種ドーパミン受容体アゴニスト類に使用する計画である。生体への投与であるため、かなりの多くの量が必要と見込まれる。したがって、平成24年度から繰り越した分も利用し、十分量の試薬を確保し、実験を遂行する予定である。さらに、24年度に引き続き、免疫組織化学的検討も必要になってくると考えられる。必要となる抗体類、消耗品類を購入するための費用に用いる予定である。加えて学会発表も目標としているため、旅費としても充てる予定である。
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