2013 Fiscal Year Annual Research Report
弛緩溶液に分散した筋原線維懸濁液の水プロトンNMR横緩和経過
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24650212
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Research Institution | Jikei University School of Medicine |
Principal Investigator |
大野 哲生 東京慈恵会医科大学, 医学部, 助教 (30233224)
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Keywords | 筋原線維 / 水 / 疎水性相互作用 / 筋タンパク質 |
Research Abstract |
以前測定した硬直条件では、筋原線維表面から500nmほどの距離まで動きの束縛された水が分布することが示唆されていたが、今回グリセリン筋を用いて弛緩条件の筋原線維懸濁液のNMR測定を20℃で行い、弛緩条件ではこの動きの束縛された水の層が筋原線維外には殆ど見られなくなることがわかった。また7℃、34℃で同様の測定を行い、弛緩状態では筋節内部にしか存在しないと考えられる動きの束縛された水は、硬直状態と同様に、疎水相互作用に類似した束縛であることが分かった。これらのことから筋タンパク周囲の水分子は、疎水性相互作用に類似した束縛を受けており、硬直から弛緩になるときにその量が大きく減少することが示唆された。 ミオシン頭部ではATP加水分解に伴いアクチンとミオシンのクロスブリッジの結合乖離が起こることで筋肉は張力を発生しているが、このクロスブリッジの結合乖離のサイクル中に硬直性のクロスブリッジが形成されることは知られている。今回測定された硬直と弛緩状態での、束縛された水の量の大きな変化は、収縮のキネティクスに何らかの寄与をしている可能性もある。 弛緩条件でATPを添加するとミオシンは速やかにATPを加水分解し、ミオシンADPリン酸複合体になっていることが考えられるが、収縮のキネティクスへの寄与を知るためには他の中間体の水の束縛程度を知ることがより重要であると考え、当初予定していたミオシン溶出した筋原線維懸濁液のNMR測定は行っていない。ATPはミオシンに結合し筋肉を弛緩状態に導くが、ミオシンを溶出してしまった筋原線維ではATP結合が起こらず、硬直状態と弛緩状態で同じ結果になると考えられたためである。このことから、ミオシン溶出実験よりADP存在下でのNMR測定を優先して行った。これによりADP存在下でもATPと同程度の量の水の束縛しか観察されないことが分かった。
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