2012 Fiscal Year Research-status Report
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24650239
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Research Institution | Nagahama Institute of Bio-Science and Technology |
Principal Investigator |
山本 博章 長浜バイオ大学, バイオサイエンス学部, 教授 (40174809)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 色素細胞 / 脈管系 / マイクロCT |
Research Abstract |
脈管系は視聴覚器官の機能維持にも必須であるが、本課題は、この血管系の構造構築と維持に、一見関係のない皮膚の色素細胞(メラノサイト)と由来を同じくする色素細胞(同じくメラノサイトと呼ばれる)が必須か否か、色素細胞を分化できないマウス毛色変異体と野生型を用いて、両者の血管系の形態比較から明らかにすることを第一義的な目的としている。さらには血管形成における脈管形成と血管新生にメラノサイトが及ぼす効果を培養下で再現できるか否か、その培養法の開発も試みる。 まず完成された内耳血管条と脈絡膜における、脈管系とメラノサイト共局在構造を解析すべく、メラノサイトの有無によって当該組織の高次構造がどのような影響を受けるか、野生型およびメラノサイトを欠くMitf (Microphthalmia associated transcription factor)遺伝子座の突然変異体マウスMitfmi-bwについて、光学顕微鏡およびマイクロCTを用いて観察を開始した。マイクロCT像を得るために、何種類かの造影剤を用いて解析を行ったが、それぞれ一長一短があることがわかり、その特性を利用しながら解析を続けてきた。その結果、脈絡膜の脈管系の形態がメラノサイトの有無に影響を受けることを強く示唆する結果を得た。一方、内耳血管条における解析は、蝸牛管を覆う骨を脱灰する必要があり、光学顕微鏡による観察は比較的再現性良く行えるようになったが、マイクロCTによる解析はその方法で試行錯誤を行っているところである。また血管培養系は、タイプの異なるコラーゲンを用いて培養条件の検討を行っているところである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
対象とした突然変異体の産仔数が少なく、その供給に努力を要したが、当初予定していた形態学的解析をほぼ計画通り進めることができた。高次構造解析におけるマイクロCT解析の有用性は高いが、マウスの脈絡膜や内耳等、狭い領域における脈管系構造の抽出を必須とする本研究で問題となった点は、利用する造影剤の特性である。解析領域が狭く、外部から容易にアクセスできる場所ではないので、非侵襲的なCT像の取得が困難で、試行錯誤の末、現状では当該領域を摘出して解析装置にセットしている。その際、低粘度の造影剤では、解剖時に漏えいし特段の注意と手法が必要となったことである。また固化させる造影剤は高いCT値が得られるものの、細い脈管系へのデリバリーに問題がある。これらを勘案しながらも、得られた脈絡膜脈管系の再構築像は、その領域における当該構造にメラノサイトの関与を強く示唆するものであり、目指した観察像が得られた。内耳についてはさらに狭い領域である上に、骨に覆われているため、試行錯誤を行っているところである。 当初の計画では、メラノサイトと脈管系の共局在の観察も開始する予定であったが、メラノサイトをトレースするためのマーカー遺伝子として利用を予定していたLacZ遺伝子をトランスジーンに持つマウスの個体数が揃わず、現在もその飼育に鋭意努力しているところである。
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Strategy for Future Research Activity |
何よりも解析対象とするマウス突然変異体が安定して利用できるように努力する予定である。 脈絡膜脈管系の高次構造解析についてはさらに鮮鋭な構築像が得られるようにその手法を改良し、内耳蝸牛管の特に血管条における脈管系の解析については、脱灰手法との組み合わせの良い条件を見出すことに努力する予定である。当初予定どおり、平成25年度は24年度の計画を継続しながら、メラノサイトの初代培養系も立ち上げる予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初期待していた当該マウスの産仔数が実際は少なく、使用匹数が少なくなった。この変異体は研究室の特産で他では購入できないため、年度の後期までこの状態が続いてしまい、マイクロCT像を得るために使用する高価な造影剤やそれに伴う消耗品類も当初見積もっていた数量を利用できなかった。すでに飼育ケージ数を増やし、当該マウス系統の母集団を増加させつつあるので、次年度は、初年度に使用予定であった消耗品類の購入も追加で必要となる。
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