2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24650243
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Research Institution | Tokyo Metropolitan Institute of Medical Science |
Principal Investigator |
吉川 欣亮 公益財団法人東京都医学総合研究所, ゲノム医科学研究分野, プロジェクトリーダー (20280787)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
庫本 高志 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (20311409)
和田 健太 東京農業大学, 生物産業学部, 助教 (20508113)
多屋 長治 公益財団法人東京都医学総合研究所, 基盤技術研究センター, 動物実験開発室室長 (90175456)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 遺伝学 / ゲノム / 種差 / 遺伝様式 / 白内障 / ラット / マウス |
Research Abstract |
研究実績の概要 Mip (major intrinsic protein of eye lens fiber) 欠損ラットKFRS4(Kyoto Fancy Rat Stock 4)は、ヒト白内障モデルラットである。面白いことに、Mip変異をもつヒトおよびマウスの白内障発症が優性遺伝するのに対し、KFRS4の白内障発症は劣性遺伝する。この遺伝様式の差異はこれまでの遺伝学の定説では説明できず、「種差」が遺伝様式決定に関与しているものと推定された。そこで本研究はこの種間の遺伝様式の差異を実証するため、3つの検証実験を実施した。第1の実験としてKFRS4が愛玩用ラット由来であることから、その遺伝的背景が遺伝様式の差異に影響を与えている可能性を予想し、遺伝的背景が異なる3系統のラット近交系と戻し交配し、得られた個体について白内障発症の発症を観察した。その結果、Mip変異をヘテロでもつ個体はすべて正常な水晶体構造を示し、さらに高齢までその形態は維持されており、KFRS4の遺伝的背景の遺伝様式への関与は否定された(Watanabe et al. PLoS One 2012)。第2の実験としてKFRSのMip変異部位が白内障発症に影響を与えている可能性を予想し、KFRS4とは異なる領域にMip変異をもつラットのENUラットライブラリーからの単離を行った。Mipの4つのエクソンについて、4,608 DNAサンプルをスクリーニングした結果、第4エクソンにT>Gの変異が検出されたが、この変異は3’の非翻訳領域に検出された。第3の実験として、KFRS4に生じたMip変異(第一エクソンに5 bp挿入変異)が遺伝様式に影響を与えた可能性を予想し、KFRS4のMip変異を導入したノックインマウスの作製を行っている。現在までにBAC改変によりそのコンストラクトが完成し、ES細胞への導入を試みている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
一つの重要な成果として、これまで報告されていたヒトおよびマウスのMip変異による白内障発症とラットMip変異による白内障発症の遺伝様式の差異を提唱する論文が発表でき(Watanabe et al. PLoS One 2012)、また、その成果を国際学会(25th International Mammalian Genome Conference. October 22, 2012, St Pete Beach, Florida, USA)で発表した結果、本研究の研究協力者である大学院生の渡部がYoung Scientist Awardを受賞した。 しかしながら、本申請課題の主要な目的であるMip変異ラットのスクリーニングおよびMipノックインマウスの作製については達成できなかった。Mip変異ラットのスクリーニングにおいては、平成24年度内に変異ラットの樹立を達成目標としていたが、4,608 のDNAサンプルのスクリーニングを行ったにもかかわらず、Mip変異はみつかったものの、その変異部位は非翻訳領域であった。一方、Mipノックインマウスの作製についても同様に平成24年度内に変異マウスの樹立を達成目標としていたが、KFRS4ラットの変異を導入したコンストラクトの構築に手間取ったため、その構築が大幅に遅れた。試行錯誤のうえ、最近BAC改変によりコンストラクトが構築でき、現在ES細胞への導入を行っている状況にある。
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Strategy for Future Research Activity |
1.ラットKFRS4変異を導入したMipノックインマウスの作製:現在コンストラクト導入中のES細胞をスクリーニングし、C57BL/6J (B6) マウスの胚盤胞にインジェクション、キメラマウスを作製し、B6へ交配後、生殖系列への伝播が確認された個体を選択し、系統化を進める。また、得られた個体のホモ個体およびヘテロ個体の白内障発症の観察および水晶体の表現型解析を実施する。また、本研究の目的は、マウスにラットKFRS4のMip変異の導入により、白内障発症が優性遺伝するか否かを検証することである。そこで予備実験として作製したコンストラクトのトランスジェニックノックインも同時に進める。 2.Mip変異ラットのスクリーニング:本年度はさらに、ENUライブラリーから5,000のDNAについてMipの4つのエクソン領域の変異スクリーニングを実施し、翻訳領域内におけるミスセンス変異およびナンセンス変異の同定を目指す。得られた個体は早急に系統化を進め、表現型解析を実施する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究代表者・吉川は助成頂いた研究費の60%、研究分担者・多屋は研究費のすべてを、ラットKFRS4変異を導入したノックインマウスの作製に使用する。また、吉川はそのMipノックインマウスおよびMip変異ラットの表現型解析のための電子顕微鏡試薬、包埋試薬、細胞染色マーカーなどに20%の研究費を使用する。 研究分担者・庫本はENUライブラリーからのMip変異ラットスクリーニングに研究費のすべてを使用する。また、研究分担者の和田は庫本からラットの分与を受け、その飼育費および表現型解析に研究費を使用する。 加えて、研究成果を発表するため、吉川または研究協力者である筑波大学大学院生・渡部(研究代表者所属の教育研修生)の学会旅費、論文投稿のための費用に20%の研究費を使用する。
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[Presentation] A 5-bp insertion in Mip causes recessive congenital cataract in KFRS4/Kyo rats
Author(s)
Watanabe K, Wada K, Ohashi T, Okubo S, Takekuma K, Hashizume R, Hayashi J, Serikawa T, Kuramoto T, Kikkawa Y
Organizer
26h International Mammalian Genome Conference
Place of Presentation
St Pete Beach, Florida
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