2012 Fiscal Year Annual Research Report
心筋細胞増殖能喪失の個体発生と系統発生:遺伝子発現正帰還制御ループ形成の進化論
Project/Area Number |
24650245
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
河原 剛一 北海道大学, -, 名誉教授 (20125397)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2013-03-31
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Keywords | イモリ心筋 / 心筋損傷後再生 / ラット心筋 / 心筋細胞増殖 / 心筋細胞増殖能喪失 |
Research Abstract |
一般的に我々ヒトを含む哺乳動物の心筋細胞は終末分化細胞と考えられ,生まれた直後に分裂能を失い,出生後は増殖しないものとして理解されてきた。成人の心筋細胞が生後の分化によって,細胞周期から抜け出して分裂能を喪失するメカニズムは,これまでにも,その重要性から,様々な観点から膨大な研究が行われてきたが,未だ「謎」として残されている。そこで本研究では,心筋再生能を有しているイモリおよび生後心筋再生能を喪失しているラット心筋細胞を実験対象として,ヒトを含む哺乳類における心筋再生能喪失メカニズムを,個体発生学的および系統発生学的観点から解明することを目的とする。本年度に得られた研究成果は,以下のようにまとめられる。 (1)イモリ心筋損傷・再生組織のextractsをラット心筋細胞培養系に付加し,心筋細胞増殖能の変化を解析した結果,細胞内活性酸素種(ROS)生成が抑制され,p38 MAPK活性も抑制された。また,細胞増殖のマーカータンパクであるPCNAの核内発現が上昇した。 (2)イモリ心筋損傷・再生組織のextractsをラット心筋細胞培養系に付加したところ,心筋細胞の自発的な拍動リズムのゆらぎ(拍動周期の変動係数で評価)が増加した。また心筋細胞内ギャップ結合タンパクであるCx43発現も減少した。 (3)以上の結果から,イモリでは心筋損傷によって周囲残存心筋の増殖能を増加させる何らかの因子が放出されており,その因子は系統発生学的に保存されていること,その因子が哺乳動物心筋の生後分裂能喪失に関与しているROS-p38 MAPK活性化-Cx43発現の正帰還制御ループを開放することでラット心筋細胞の増殖能を亢進させる可能性を明らかにした。イモリ心筋損傷・再生組織のextractsに含まれる,増殖能増加に関与している鍵分子の解明が今後に残された課題である。
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