2013 Fiscal Year Annual Research Report
アルツハイマー性神経回路変調発生・伝搬過程の可視化
Project/Area Number |
24650249
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
神保 泰彦 東京大学, 新領域創成科学研究科, 教授 (20372401)
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Keywords | 脳・神経 / 神経変性疾患 / 細胞・組織 / 神経科学 / ナノバイオ |
Research Abstract |
平成24年度に設計・製作した複数の細胞培養マイクロ区画を有する電極アレイ基板を利用し,アルツハイマー性神経障害原因物質の有力な候補であるアミロイドβ投与の影響を調べることに主眼を置いて実験を実施した. 5×7 mm の方形区画2個が幅50 um, 高さ5 um, 長さ150 umのトンネル群を通じて連絡する構造をシリコンゴム(poly dimethyl siloxane; PDMS)で製作し,64個のマイクロ電極を集積化した基板上に設置した.胎齢18日のWistar Ratから採取した海馬神経細胞を両区画に播種して分散培養した.βIII tubulin をマーカとする免疫組織化学染色により,両区画の細胞群がマイクロトンネルに進入した突起を介して結合していることを確認した. 海馬分散培養神経回路が安定する3週間以降の試料について電気活動及び細胞内Ca濃度変化を指標に評価を行なった.培養開始後24日の時点で2つの区画のうち一方だけにアミロイドβ42を投与した(区画間はマイクロトンネル構造を介して連絡しているが,溶液間の相互作用は大きくないことが報告されている).薬物投与操作当日から1週間の自発電気活動を記録したが,薬物の有無による有意な差異は検出されなかった.他方,細胞内Caイオン濃度変化については薬理操作群の試料が優位に濃度が上がっているという結果になった.本研究で検証を目指す仮説(synaptic scaling; 神経変性障害に伴うシナプス伝達機能低下を補償するためにアセチルコリン作動性の調節機能が活性化して細胞内Ca代謝系が変化,短期的には神経回路活動レベルの変化を防ぐが,長期的には系全体の障害を生じる)との関係を示唆する結果と考えられ,今後,調節系を含めた培養システムに今回の手法を適用して計測を実施することにより,より明確な結果を得ることが期待できる.
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