2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24650258
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Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
堀内 孝 三重大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (10201758)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
野村 信介 三重大学, 医学(系)研究科(研究院), 客員教授 (20198625)
宮本 啓一 三重大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (70252343)
村田 智博 三重大学, 医学部附属病院, 助教 (90508532)
石川 英二 三重大学, 医学部附属病院, 講師 (10362352)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 腹膜中皮細胞 / 細胞分離 / 形質変換 / 細胞老化 / 抗酸化能 / 細胞間結合 |
Research Abstract |
血液浄化療法部で腹膜透析を受けている14名の患者より、本研究期間内(1年)、計63回の排液を採取した。シャーレに接着した細胞は回収された全細胞の3.1%であり、その約98%は上皮マーカーであるcytokeratin-18(CK-18)陽性細胞であった。今年度得られたこれらの基本データは、本研究以前の自験例と同程度であることが確認できた。 CK-18陽性細胞に対し、①細胞の形態、②上皮-間葉系形質変換マーカα-SMAの発現率、③老化マーカであるβ-ガラクトシダーゼ活性、④DCFによる抗酸化測定、⑤膜間電気抵抗測定による細胞間結合の評価を行うとともに、⑥本年度購入した二次元電気泳動装置の立ち上げを行った。①細胞形態:先行研究(Mo他:N Eng J Med, 2003)では得られた細胞の形態は玉石状が58%、紡錘状が42%であったが、本研究で得られた中皮細胞は88%近くが玉石状の形態を有しることが明らかとなった。②α-SMAの発現率:玉石状の形態に関わらず、約30%がα-SMA陽性であり、形態のみから上皮-間葉系形質変換を判定することは困難であることが示唆された。③β-Gal活性:β-Gal陽性細胞は8.5±4.1%から23.5±4.1%と腹膜透析期間12か月未満と以上で有意に上昇していた。④抗酸化能測定:抗酸化性も減少し、0.1M過酸化水素添加による活性酸素産生はDCF測定により15.8±6.1から23.4±3.1と上昇し、抗酸化能の現象が明らかとなった。⑤細胞間結合測定:排液中から得られた中皮細胞の形成する膜間電気抵抗値は17±3とヒト大網由来の中皮細胞の形成する膜間電気抵抗値(32±2Ω・cm2)より47%低い値であった。⑥二次元電気泳動:患者間でスポット位置や密度が異なることが明らかとなった。 以上、排液由来の中皮細胞には機能的に分布があることが確かめられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
腹膜透析排液は一人当たり一日8リットル、年間で3000リットル、我が国9,300人の患者では約3万トン/年棄てられている。これらの医療廃棄物を再生医療用の資源に資することを本研究の目的とする。 本年度は特にマクロファージを中心とする腹膜透析液排液中の細胞群から接着細胞である腹膜中皮細胞とその前駆細胞を分離し、キャラクタリゼーションを行うことを目的とした。プラスチック表面への接着による分離により安定した中皮細胞回収技術が確立できた。接着細胞の98%は上皮マーカであるCK-18が陽性であり、かつ典型的な玉石状の形態を呈することも明らかにできた。特筆すべきことはこれらの細胞のキャラクタリゼーションが1)形質変換マーカ、2)細胞老化、3)細胞間結合といった従来から着目している因子によって特徴づけることが可能になったことである。 従って、この中には上皮‐間葉系形質変換や老化細胞が含まれており、それらを分離する技術が必要であることが再確認できた。これらの細胞分離を行うためには、正常な中皮細胞と異常な中皮細胞との間のプロテオミクス解析が有用であり、そこから得られた特定タンパク質の同定が次へのステップの重要なキーテクノロジーとなる。そのため、本研究助成により2次元電気泳動装置を購入し、再現性のある信頼性のある操作確立に取り組んだ。8名の患者から得られた中皮細胞からタンパクの抽出を行いpre-liminaryな泳動実験を行うことができた。異常タンパクの同定には至ってないが、同一患者での再現性、患者間での特異的スポットの検出など定性的には評価できるデータが得られるようになり、次年度の研究展開への礎を築くことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
排液由来細胞のキャラクタリゼーションは継続して行い、臨床的意義を抽出して行く予定である。その中でもCK-18陽性細胞群の分類に関連する因子の絞り込みに焦点を絞る。そのためにも二次元電気泳動のデータベースの構築とTOF-MASSによる特異タンパクの同定を推進する。これにより、正常細胞、可逆的変性を受けた細胞、不可逆な変性を受けた細胞への分離を試みる。 排液由来細胞の単層の膜間電気抵抗値は臓側のみからなる細胞単層より47%低い値を示し、かつTGF-β1投与による膜間抵抗値の減衰値が各々20±12Ω・cm2、11±22Ω・cm2と異なった値であった。このことは何種かの腹膜中皮細胞の混合を示唆するものであり、おそらく壁側由来と臓側由来の細胞と思われる。上記の三群の分離とは別に両者の分離も重要な課題であり密度勾配法等を用い分離する計画である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
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Research Products
(10 results)