2012 Fiscal Year Research-status Report
細胞内における生体直交性化学反応を基盤とする金属ナノ粒子の動態制御
Project/Area Number |
24650261
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
伊藤 健雄 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (80378801)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 薬剤輸送システム / 生体直交性反応 / ナノ粒子 / 蛍光共鳴エネルギー移動 |
Research Abstract |
細胞内におけるナノ粒子表面化学構造変換を実現するために、触媒を使わず生体直交性反応を引き起こす化学構造の合成とそれを含むナノ粒子作製、および細胞内におけるナノ粒子表面修飾反応の条件検討を行った。 本年度は、ナノ粒子のうち、そのものの生体毒性が低いことがわかっている蛍光性シリカナノ粒子を合成した。フルオレセイン(FITC)を内包したシリカナノ粒子(粒径 ~80 nm)を、既知の方法を改良して作製した結果、過去の報告例よりもFITC内包量の多いナノ粒子を得ることができた。分散性向上のために、ナノ粒子表面をアミノ末端含有ポリエチレングリコールで修飾した後、アミド結合を介してアルキン構造を導入し、水溶液中で分散するナノ粒子を得ることに成功した。この粒子表面における、アジド化合物とのHuisgen環化付加反応性を調べるために、ナノ粒子水溶液にアジド基を有するシアニン色素化合物(Cy3-N3)を添加した後に、蛍光測定したところ、蛍光共鳴エネルギー移動が認められた。これにより、ナノ粒子表面に一定量のアルキン構造が導入されていることを確認した。 さらに、ヒト肺がん細胞A549とアルキン修飾ナノ粒子を24時間培養後、同様にCy3-N3を添加したところ、細胞内で蛍光共鳴エネルギー移動が観察された。このことから、ナノ粒子の表面構造を細胞内でも効率よく変換することが可能であることが明らかとなった。この技術は、ナノ粒子を用いた薬剤輸送システムの構築にも利用できる可能性がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は以下の項目を目標に研究に取り組んだ。 1.生体直交反応性基を有するナノ粒子の合成 2.合成ナノ粒子の物性評価(大きさ、表面電位、親油性など) 3.細胞内におけるナノ粒子表面構造変換反応の評価と細胞内移動挙動の顕微鏡観察 その結果、すべての項目を達成し、さらに次年度に計画していた、ナノ粒子の細胞内器官集積のための修飾化合物の合成にも取り組み始めたところであることから、当初の研究計画どおり、あるいはやや前倒しで研究を遂行中である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後はナノ粒子の表面構造変換に伴う細胞内挙動観察に取り組む。細胞内に取り込ませたナノ粒子に対して、物性(極性、親水性など)の異なる表面修飾小分子を外部から添加することにより細胞内反応を起こし、その後の表面化学修飾ナノ粒子の移動の様子を観察する。得られる結果に基づき、ナノ粒子の細胞内滞留性と表面化学構造の相関を考察する。 さらに、細胞内特定器官親和性分子によるナノ粒子表面の細胞内修飾にも取り組む。細胞膜脂質成分に化学修飾した分子を外部より投入し、ナノ粒子表面への細胞内結合反応を試みる。この反応を介して、細胞膜内面へのナノ粒子局在化や、ナノ粒子の細胞外排出の促進などが起こることを期待している。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初購入を予定していたCO2インキュベーターについて、共同施設内で新規導入されたため、当該研究費を次年度に持ち越すこととなった。逆に、本年の研究過程で、所有の蛍光顕微鏡では撮像が不鮮明であることが明らかになった。そのため、次年度に共焦点レーザー顕微鏡(共同施設)を利用する経費に充てる予定である。 研究費は、薬品・消耗器具購入の他、細胞内ナノ粒子の蛍光による定量のためのプレートリーダー蛍光増設ユニットの購入(備品)、研究成果発表のための旅費に使用する。
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