2012 Fiscal Year Research-status Report
PEG脂質と外部刺激を利用した新規細胞膜表面修飾法の開発
Project/Area Number |
24650262
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
樋口 ゆり子 京都大学, 薬学研究科(研究院), 助教 (40402797)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
|
Keywords | 幹細胞 / PEG脂質 / 細胞膜表面修飾 / 超音波 |
Research Abstract |
本研究の目的は、PEG脂質を用いて短時間で効率よく細胞膜表面を修飾する方法の開発である。初年度は、まず、PEG鎖長が2000、5000、10000のPEG脂質の先端にFluoresceinを結合させた、Fluorescein -PEG脂質を合成した。合成後、MALDI-TOFMSによる分子量測定により、目的物が合成できていることを確認した。次に、ヒト由来間葉系幹細胞株を用いて、細胞膜表面への修飾量の評価法を確立した。表面修飾された細胞にトリパンブルーを添加し、細胞膜表面の蛍光を消光させた細胞と、消光させない細胞の蛍光強度の差から算出し、細胞膜表面の外側に修飾されている分子数を評価した。既に、我々は細胞分散液の温度上昇が修飾量を増大させることを確認しているため、超音波照射による水温上昇の影響を排除する方法を確立した。細胞分散液を水槽につけて10分間、各強度で超音波照射し、細胞分散液が37度に維持できる水槽の温度を決定した。また、超音波の強度の上昇に伴い修飾量も増大し、超音波照射しない場合と比較して修飾量は最大3.2倍になった。一方、各強度で10分間超音波を照射後の細胞生存率を照射しない場合と比較したところ、3 (W/cm2)まではほとんど違いはなかったが、4 (W/cm2)では生存率が有意に減少した。さらに、細胞分散液に添加するFluorescein -PEG脂質の濃度の影響を評価したところ、0.1 (mM)までは濃度の上昇に従い修飾量も増大するが、0.1 (mM)と0.5 (mM)までは大きく上昇することはなかった。最後に、超音波照射時間を延長すると修飾量が増大し、超音波照射した場合と同程度の修飾量にするのに必要な超音波照射せずに修飾した場合の修飾時間を比較すると、超音波照射により約1/2の時間で修飾できた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度は、各PEG鎖長のfluorescein-PEG脂質の合成、細胞膜表面への脂質の修飾量の評価法の確立、超音波照射による細胞膜表面修飾の方法の確立を終え、最終的に超音波照射をしない場合の修飾法と比較して、短時間で修飾できるようになった。また、次年度への準備として、PEG鎖長が2000より短いPEG脂質の合成・精製法をほぼ確立できている。また、次年度、標的指向化を目的としたリガンドとして接着分子に認識されるペプチドを合成し、その結合定数のSPRによる評価を開始した。したがって、当初の計画はおおむね順調に進んでいると言える。
|
Strategy for Future Research Activity |
超音波を用いた修飾法は初年度にほぼ確立された。しかし、実際にはもう少し修飾効率を上げる方法が必要になると考えられるため、超音波照射に加え、さらに修飾量を増大させる方法を検討する。さらに、今回は、PEG脂質として購入できる範囲で実験を行ったが、細胞膜表面修飾には、2000より短いPEGの方が適している可能性があるため、新たに短いPEG鎖を持つPEG脂質を自ら合成・精製する方法を確立した。そこで、次年度は、この短いPEG鎖による細胞膜表面修飾、さらにPEG修飾された細胞を実際に生体内で使用することを踏まえ、修飾された細胞とその他の細胞との細胞間接着などの評価へと進める予定である。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年度、短いPEG鎖の合成・精製法の確立を目的に小スケールで合成を開始した。次年度は、本格的にスケールアップさせるため、これらの合成に必要な、各鎖長のPEG、脂質および合成試薬、ガラス製品などを購入する。また、細胞培養に必要な試薬類、プラスチック製品の購入、また、細胞、細胞を採取するためのマウス、の購入に充てる予定である。さらに、2年目は、成果の公開を目的とした学会発表、論文投稿、英文校正などへの使用も予定に入れている。
|