2012 Fiscal Year Research-status Report
酸化的環境のための小さな時間分解蛍光イメージングプローブの開発
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24650266
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | Fukushima Medical University |
Principal Investigator |
和田 郁夫 福島県立医科大学, 医学部, 教授 (40182969)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 蛍光タンパク / 分子イメージング / 分泌過程 |
Research Abstract |
分泌系で合成されるタンパクの蛍光標識のために、Cysを持たない蛍光タンパクセットを作成して報告した。新たに、chromismの特性を示す光活性化タンパクPA-SGFP2と、光変換タンパクDendra2のシステイン残基を飽和変異を用いて至適なアミノ酸に置き換えて、ほとんど同じ光化学的特性をもつ新たなcf(cysteine-free)Dendra2を作成することができた。また、蛍光寿命が一成分のcfSGFP2変異体もできた。これらを用いて小胞体内でのカーゴタンパクの立体構造の変化に伴うダイナミクスの制御に関する定量的計測を行っている。 研究の過程で、現在用いられている改良体が単量体であることは溶液において示されているが、細胞内でも同様かについては正確な証明は殆どされていないことに気がついた。これは重要な特性なので、細胞内環境での分子数の計測を行うために、光の量子的特性を利用したcoincidence correlationの手法が応用できないか検討を行い、拡散速度に依存しない計測が可能なことは示した。これを用いて、先に報告したcfSGFP2について調べると、分子混雑度の増大に伴って多量体化を起こす事が示唆された。そこで、これを押さえる変異について検討し分子混雑度の増大に抵抗性のプローブを作成し、細胞内での状態について検討中。 さらに、これと関連して、cgfTagRFPについて、βcan構造外部のflanking domainは削除しても影響がないことは確認できた。 これら自家蛍光タンパクよりも小さなプローブとして、現時点では、ランタノイド類金属結合ペプチドタグも作成し検討したが、FMNを蛍光基とするiLOVの改良体phiLOV2.1がもっとも実用性が高い。この一分子輝度はSGFP2の約1/4程度だが、これより高い輝度を持つ変異体が作成できたので、さらに改良をすすめている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
細胞質環境のためのものである蛍光プローブを酸化的な環境に適したように改変することは、Cysが蛍光基の形成そのものには関与しないので、飽和変異により他のアミノ酸に置き換えることで可能であるということが、本研究の基本想定である。このアプローチは、少なくとも試みたすべてで成功しており、これまで作成した構成的な蛍光タンパクから、chromismの特性を持つ光変換タンパクなどまで、ほとんどparent分子と代わらない程度のものを作成することができた。 さらに、この過程で、自家蛍光タンパク自体の問題点も新たに見いだされたが、これにはTCSPCを用いる新しい技術を使ってこれを計測できるようになり、対策を立てることがほぼできつつあり、外界環境での適切なイメージング系の開発のために、重要な進展が得られつつある。 また、他の低分子蛍光基を用いる小型プローブについて検討したところ、最近報告されたiLOVの改良体が最も優れたものであることが判明したので、これを元にして、輝度だけでなく、単量体特性についても改良を加えているところである。 このように現時点では、目的に向かって、概ね計画通りに進行しているように思える。
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Strategy for Future Research Activity |
1.昨年度新たに改良した酸化的環境で安定な自家蛍光タンパクについて、そのプローブとしての有用性について、従来型の分子との比較を行う。局在だけでなく、特にダイナミクスと、信号伝達特性など、他分子との相互作用について比較し、これらの有用性を証明する。 2.フラビン類を補酵素として用いる蛍光タンパクの改良と小胞体内・外界環境への適応。さらにこれを融合タンパクとして用いる場合に生じうる問題点の解決。 3.ランタノイド類金属結合ペプチドタグ(LBT)の小胞体内でのプローブとしての可能性の検討。LBTは17残基と短い配列からなるが、現段階では、LBTは輝度の点において、PhiLov2にも遠く及ばない。しかし、6個直結した6xLBTでは、少なくとも、細胞に発現した場合に汎用顕微鏡でも検出することは可能だった。これの小胞体でのプローブ特性を調べ、さらに改良が可能か検討する。もし2項と比較してメリットが薄いようであれば、こちらは追求しない。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
消耗品1,000千円(DNAシークエンシング300千円、試薬類300千円、細胞培養器具類100千円、顕微鏡パーツ300千円)、旅費210千円(国内旅費70千円x3回)、その他(論文投稿料合計290千円)
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