2012 Fiscal Year Research-status Report
音響情報を利用した腱の断裂機序の解明と損傷治癒過程評価のための基礎的研究
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24650267
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
若山 修一 首都大学東京, 理工学研究科, 教授 (00191726)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山本 衛 近畿大学, 生物理工学部, 准教授 (00309270)
坂井 建宣 首都大学東京, 理工学研究科, 助教 (10516222)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 腱 / 損傷 / アコースティック・エミッション / AE位置評定 / DIC法によるひずみ分布測定 / 損傷治癒 |
Research Abstract |
家兎膝関節から、骨・腱付着部を含む膝蓋腱-膝蓋骨複合体を摘出して供試体とした。 ①静的試験および損傷のAE検出 生理食塩水中で腱供試体の引張試験を行った。供試体の膝蓋骨部および脛骨部にそれぞれAEセンサを貼付し、生理食塩水からセンサを保護するため、センサごとアルミニウム管内にポリメチルメタクリレート(PMMA)で封止してつかみ部とした。引張試験の際には、2chセンサ間の到達時間差からAE減の位置評定を行った。また、供試体表面にはマーカをスプレーし、マーカ間の相対変位からひずみ分布を算出するデジタル画像相関法(Digital Image Correlation; DIC)を利用して表面のひずみ分布を決定した。 引張試験を行い、損傷のAEモニタリングを試みた結果、最大荷重に達する前にAE信号が検出された。また、DIC法で測定したひずみ分布で、大きな局所ひずみが発生した位置と位置評定されたAE源の位置はよく一致した。さらに、AE信号が検出された時点で除荷し、評定されたAE源の位置の部分を観察したところ、繊維束の破断が観察された。以上の結果から、巨視的な荷重が低下する前にその前駆現象である微小な損傷をAE法で検出でききることが明らかになった。 ②損傷腱および損傷治癒腱の引張試験における損傷のAE検出 家兎の膝蓋腱に損傷を施した損傷腱、および損傷付与後1週間治癒させたのちに摘出した損傷治癒腱の供試体を作製し、上記と同様の評価を行った。損傷を与えた腱は最大荷重は健全な腱よりも小さくなったが、最大荷重までの伸びは大きくなった。一方、損傷後に治癒させた腱は、まだ試験点数が少なく今後の検討が必要である。しかしながら、両者とも最大荷重前に損傷がAE信号として検出されており、今後、AE信号の特徴についても検討を進める必要がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
静的引張試験における損傷のAE検出技術の開発に予想以上に時間を要したため、当初予定していた疲労試験や衝撃試験は行うことができなかった。 その半面、可能性が小さいと思われた2chセンサの到達時間差からのAE源の位置評定に成功し、DIC法で決定した教書ひずみ分布や除荷後の観察結果とよい一致を示した点は当初の計画を大きく上回った成果が得られたといえる。さらに、平成25年度に予定していた損傷を与えた腱や損傷付与後に治癒させた腱に関する試験を前倒しして着手することができた点は評価できると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
基本的には、前年度の研究を踏襲し、腱の断裂過程における損傷を、AE解析・DIC解析・断面観察により評価するが、引張試験の負荷速度を変化させて粘弾性挙動の腱の損傷発生・蓄積機序に及ぼす影響を調査するとともに、衝撃的な荷重の下での腱の損傷のAE検出を試みる。また、繰返し負荷を与える疲労試験を行う。 一方、損傷を与えた腱や損傷付与後に治癒させた腱については、試験点数を増して、損傷の治癒の程度をAE信号から判別できる手法の開発を試み、本研究課題の目的である、腱の断裂機序の解明、および音響情報を利用した、腱の健全性や治癒過程の評価法に関する基礎的知見を明らかにする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
試料作製用消耗品、AEセンサ、などの物品購入のほか、研究打ち合わせや研究成果好評のための旅費として使用する計画である。
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