2012 Fiscal Year Research-status Report
ナノ超微細加工技術による熱弾性膨張型レーザー誘起水中マイクロ衝撃波発生装置の開発
Project/Area Number |
24650273
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
中村 匡徳 埼玉大学, 理工学研究科, 准教授 (20448046)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
平原 裕行 埼玉大学, 理工学研究科, 教授 (20201733)
澁谷 秀雄 埼玉大学, 理工学研究科, 助教 (80303709)
氏原 嘉洋 川崎医科大学, 医学部, 助教 (80610021)
池野 順一 埼玉大学, 理工学研究科, 教授 (10184441)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 衝撃波 / 微細加工 / 細胞工学 |
Research Abstract |
2012年度は①極細光ファイバー作製の基礎的技術の確立、②光ファイバー先端部への金属皮膜蒸着技術の確立、③水中衝撃波の圧力測定技術の確立の3つを行う予定であった。まず、これらを行う前に、通常サイズの光ファイバーにてこれらのことができることを確認するために、直径1mmの光ファイバーを用いて、研究を進めた。その結果として、直径1mmの光ファイバーについて一通りの実験を行った。長さ6mmに切り出した光ファイバ先端を研磨し、イオンプレーティング装置により金属を蒸着させた。研磨後にレーザ顕微鏡にて表面を確認したところ、光ファイバ先端部は十分に滑らかになっていることを確認できた。ただし、金属薄膜の蒸着後に際しては、金属薄膜表面にひび割れが発生する場合があることを確認した。これは、光ファイバーの材料であるPMMAと金属薄膜材料であるチタンの熱膨張率の顕著な違いにより、生膜に伴う冷却過程において収縮速度が異なり、ヒビ割れが生じたものが原因であると考えられる。作製した光ファイバに対して、レーザを導光し、水中にて衝撃波発生実験を行った。シャドウグラフ法により光ファイバ下流部の流れを可視化したところ、金属薄膜のひび割れの有無に関係なく、光ファイバ先端より波が発生すること確認した。波の伝播速度を計測したところ、マッハ数がほぼ1であったことから、この実験により衝撃波を発生することができることを確認した。光ファイバー下流部に圧力センサーを配置し、衝撃波圧力を計測した。結果として、衝撃波圧力は、金属薄膜のヒビ割れ度合い(表面荒さ)が大きくなると、小さくなることがわかった。このことから光ファイバー先端の金属薄膜にヒビ割れがないような生膜方法を確立することが必要であることが示唆された。結論として、2012年度は①の目標までは達成できなかったものの、②と③の目標についてはほぼ達成することができたといえる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
H24年度は、最終的な研究目標である直径5ミクロン程度の光ファイバーの加工までは達成できなかったものの、直径1mmの光ファイバについては表面加工、金属薄膜蒸着方法の確立および衝撃波圧力計測まで達成することができた。光ファイバ表面の加工については、多量のサンプルを同時に研磨するために、光ファイバ十数本を熱収縮チューブで束ね、それをワックスで次具に貼り付ける方法を考案した。その際、ファイバ端面のダレを抑制するため、次具底面に光ファイバと同じ材質であるアクリル板を貼り付けた。平面出しにつちえは、鋳鉄定盤と#1000アルミナ研粒を用いて、ハンドラッピングを施した後、ポリウレタンパッドとコロイダルセリアによるポリッシングを行った。研磨速度や研磨時間の検討に時間を要したが、最終的に光ファイバ先端の研磨加工に最適な速度と時間を求めることができた。金属薄膜蒸着は、高周波イオンプレーティング装置を用いた。金属薄膜材料としてチタンを用い、およそ100nmの薄膜をつけることに成功するとともに、表面粗さの評価方法を確立した。衝撃波の圧力計測についても、微細圧力センサでこれを精度よく計測することが判明したため、圧力計測手法の確立にも成功した。しかしながら、本年度の目標の1つとしていた直径5um程度の光ファイバ作製およびその加工にはまだ成功しておらず、来年度の課題となる。
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Strategy for Future Research Activity |
H25年度は、昨年度より細い光ファイバを加工し、衝撃波を発生させる装置を作製することに挑む。これにおいては、ファイバの単純な加工技術だけではなく、どのような冶具を作製するかが鍵となる。特に、先端直径が100um以下になると冶具の作製においても微細加工技術が求められる。昨年度、光ファイバ先端の金属薄膜にヒビ割れが生じた原因として、光ファイバと蒸着した金属との熱膨張率の違いを考えているので、本年度は、光ファイバとしてプラスチック製のものだけではなく、ガラス製のものを使用し、その影響を調べる。更に、本年度は作製した光ファイバーから生成される衝撃波の特性評価を行う。レーザー光源としてYAGレーザーを第一候補として考えているが,金属皮膜へのエネルギ供給効率を考えると、赤色光あるいはCO2レーザーなどの高波長レーザーの方が望ましい。また、光ファイバー先端部に蒸着される皮膜の金属種,皮膜厚さによっても精製される衝撃波の圧力は変わってくると考えられる.そこで、レーザー波長、レーザー出力、被膜の金属種、皮膜厚さを変えることによって。ファイバーから生成される衝撃波の波形をシャドウグラフ法によって観察すると共に、衝撃波圧力がどのように変化するのかについて調べる。更に衝撃波の特性をコントロールできるようになった後,培養細胞に対して,衝撃波の照射を行い,細胞に生じる変化について観察する.これにより,本研究にて作製する光ファイバーを介したマイクロ衝撃波発生装置のマイクロバイオメカニクスへの展開について探る.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
H25年度は、昨年度、確立した手法を用いて多くの光ファイバを作製し、実験を行う。そのために、研究費は主にその材料費に当てられる。今後の研究の推進方策で述べたように、本年度は、光ファイバの材料種、光ファイバの直径、蒸着する金属種を変えた実験を行う予定である。微細加工においては、実験条件作成のために、多くを試行錯誤に望む部分もあるため、実験材料費がかさむ。このために、研究費を割く。加えて、ファイバに導光するレーザ種の変更も考えている。昨年度は、YAGレーザを用いたが、レーザー波長やレーザ出力の影響を調べるためには、他のレーザの購入あるいは借用に研究費を投じる。また、研究成果を広く公表するための学会参加費としても研究費を計上している。
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Research Products
(2 results)