2013 Fiscal Year Research-status Report
歯科用合金の口腔内における腐食劣化を模擬した新たな測定法の開発
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24650275
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
堤 祐介 東京医科歯科大学, 生体材料工学研究所, 准教授 (60447498)
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Keywords | チタン / 腐食 / 生体材料 / 評価法 / 口腔内環境 |
Research Abstract |
本研究は、口腔内における激しい腐食環境において、歯科インプラント、矯正用ワイヤー、金属義歯床など歯科用金属材料が腐食反応を起こし、アレルギーの原因となる金属イオンが長期的に放出される問題に対して、従来の耐食性試験法とは全く異なり、乾湿繰り返し環境を厳密に再現した新たな試験方法を開発し、評価を行うものである。 平成24年度から26年度までの3年間の研究期間において、初年度は主に実験装置系を立ち上げること、および予備実験と測定条件の調整を繰り返すこととし、順調に目的を達成した。そこで本年度は、この確立された実験装置を用い、歯科医療に用いられる代表的な金属材料であるチタンについて、口腔内環境における腐食挙動が加速されると思われる、フッ素イオンを含有する擬似体液が薄膜状態から乾燥する条件において検証を行った。この結果、pH4以下、かつフッ素含有の両条件が揃った環境でのみ、チタンが激しく腐食し、表面の一部が黒色に変色することを確認した。また、電気化学インピーダンス測定によりこの現象を常時モニタリングでき、腐食が開始するのはチタン試料が溶液と接触した直後ではなく、溶液が濃縮する乾燥課程であることを究明した。 本年度のこれらの研究について、複数の国際学会・国内学会(招待講演含む)で講演を行い、成果を発信した。また、本研究の実験データの一部を一般向け社会人対象のセミナー活動での講演・実習で紹介し、電気化学インピーダンス法が液薄膜乾燥における耐食性評価に有効であることを示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、昨年度に確立した評価方法を用い、口腔内環境を模擬した環境で耐食性の評価を行うことを目的としていた。実際に、本年度は装置を用いて実験を行い、液薄膜が乾燥する課程で腐食モニタリングが可能であることを確認できた。市販のはみがき粉や洗口剤、塗布剤に含まれるフッ素濃度(900ppm)およびpH4の弱酸性環境において、チタンが加速腐食されることを確認し、当初の目的であった、液薄膜の乾湿繰り返し環境においては、従来の想定より容易に腐食することを証明した。また、国内外の学会発表等において、研究成果の発信にも努めたことから、今年度の達成度は「おおむね順調に進展している」と自己評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
研究の最終年度となる平成26年度は、昨年度の引き続き、装置を使用したデータの収集を継続する。測定対象となる医療用金属材料の種類(チタン、ステンレス鋼、コバルトクロム合金、貴金属合金等)に加え、腐食加因子(温度、乾燥速度、液膜厚さ、フッ素イオン濃度、表面粗さ等)が非常に多岐にわたるため、次の2項目を優先し、評価を行うこととする。 ・チタンの腐食の有無を決定するフッ素イオン濃度・pHの臨界値の決定 ・上記の臨界値と従来法による値の差異(チタンの耐食性の過大評価)の検証 また、膨大な測定回数に対応するため、多チャンネル同時測定を可能とするマルチプレクサーを用い、研究を効率的に遂行する。、
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年度に導入予定であった、光学的に腐食の程度を定量評価するための分光測色計・色差計の購入を見送ったため。 上記の分光測色計・色差計は平成26年度に導入する。また、研究期間の最終年度にあたるため、実験補助員(アルバイト)の雇用や国際学会発表のための参加登録費・旅費、および論文投稿に関連する費用に充当する予定である。
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Research Products
(5 results)