2012 Fiscal Year Research-status Report
薬剤のX線吸収特性を利用してガン患部を選択的に照射できる体内挿入型針状単色X線源
Project/Area Number |
24650291
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
小栗 慶之 東京工業大学, 原子炉工学研究所, 教授 (90160829)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
長谷川 純 東京工業大学, 総合理工学研究科(研究院), 准教授 (90302984)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 深部ガン治療 / 陽子線励起特性X線 / K吸収端 / 注射針 / 水ファントム / 静電加速器 / CdTe半導体X線検出器 / 電離箱 |
Research Abstract |
平成24年度は,初年度として主に実験用水ファントムの設計製作及びX線スペクトル測定系の準備と試験を実施した.水ファントムを構成するプラスチック水槽の側壁に小孔を開け,内径0.4 mm,外径0.7 mm,長さ50 mmの実験用ステンレス製注射針を挿入した.シリコンゴムで封止した後,水漏れの有無を確認した.全体を大型真空容器内にセットし,まず針の先端に重金属標的を取り付けない状態で,針内部に陽子ビームを通過させる試験を行った.水槽には水を張らず,針の出口にファラデーカップを置いて,透過してくるビームの電流を測定した.陽子ビームの集束及び入射角度を注意深く微調整することにより,針の先端で約0.5 nAまでのビーム電流を通過させることができた.このビーム電流は,針が完全に直線状であると仮定した場合の幾何学的透過効率に基く値の50%程度であった.一方,CdTe半導体検出器によるX線エネルギースペクトル測定,及び小型電離箱による線量分布測定に備え,それぞれの機器の単独での性能試験を実施した.並行してCdTe半導体検出器からの信号波形の増幅・整形に用いるスペクトロスコピーアンプをX線測定系に接続して試験用パルス発生器からのテストパルスを入力し,雑音やエネルギー分解能,応答の線型性等の性能試験を行った.また,厚い重金属標的にMeV陽子線が入射したときに発生し,注射針の壁を透過して大気中に出てくるX線の強度を評価するために,重金属標的中の陽子の阻止能,X線生成断面積,X線の標的による自己吸収及び注射針の壁による減衰を考慮した簡単な計算を行った.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
プラスチック水槽の側壁から挿入した注射針の角度を遠隔操作により調整する機構を年度内に完成することができなかった.また,X線エネルギースペクトル測定用のCdTe半導体検出器,及び線量分布測定用小型電離箱をファントム内で遠隔操作により移動させるための機構を製作するに至らなかった.このため,陽子ビームに対する注射針角度の最適化が十分でなく,透過率が低く予定のビーム強度が得られていないため.
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Strategy for Future Research Activity |
まず昨年度に達成できなかった注射針の角度を調整する遠隔操作機構,及びCdTe半導体X線検出器と線量分布測定用小型電離箱をファントム内で移動させるための機構を製作し,その試験を行う. 次に,先端に銀(Ag)標的を取り付けた注射針を水ファントムに接続し,静電加速器からの2~3 MeV陽子線を導入する.陽子ビームに対する針の角度を最適化し,標的から発生するX線のエネルギースペクトルをCdTe半導体検出器で測定してX線エネルギーを確認するとともに,X線の収量,放出角度分布,針の先端以外から発生する不要なガンマ線の強度等を調べる.陽子エネルギー依存性も調べる.残留放射能の有無にも注意を払う.並行して入射陽子の散乱,エネルギー損失,X線放出断面積等を考慮して陽子線と注射針内壁・標的との相互作用をモデル化し,ビーム透過率とX線収量を評価できる統合計算コードを開発する.これを用いて実験結果の分析を行うとともに,より高性能な標的の設計に役立てる.また高純度モリブデン(Mo)化合物試薬からX線増感剤(水溶液)を調整し,壁厚の薄い小型カプセルに密封する技術を確立する. 以上の準備作業の後,実際にファントム内に小型Mo増感剤カプセルを置いてX線を発生させ,小型電離箱を用いてカプセル背後のX線強度を詳細に調べ,カプセルの吸収線量を評価する.同時にMo化合物の代わりに水を封入したカプセルで同様な測定を行い,両者を比較することにより患部と正常組織の吸収線量の差を評価する.カプセルのサイズや増感剤濃度依存性も調べ,治療効果への影響を明らかにする.一方,前年度に得たX線放出強度データを元にファントム内のX線輸送計算,吸収線量分布計算を行う.この結果と小型電離箱による実測結果との比較を行い,正常組織への影響が少ない治療装置としての最適化設計法の確立を目指す.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
水ファントムの水槽に挿入した注射針の角度を調整する遠隔操作機構,及びCdTe半導体X線検出器と線量測定用小型電離箱をファントム内で移動させるための機構を製作するために電子回路部品等を購入する.
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