2012 Fiscal Year Research-status Report
リニア推進駆動および滞留回避機能を有する自走式カプセル内視鏡の開発
Project/Area Number |
24650293
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
森 英利 富山大学, その他の研究科, 教授 (10144130)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 検査・診断システム |
Research Abstract |
本研究は、本来利用を必要とするにも拘らず禁忌事項として制限される、憩室や狭窄部位の疑われる被験者にも適用可能なカプセル内視鏡の基本設計指針の開発を目的としている。そのため(1)カプセル自走のための機構開発、(2)滞留回避機能の付与を中心課題として研究を進めている。本年度は、(2)に関連して滞留回避機構の駆動方式の検討を主目的とし、試作装置を使用して、その操縦特性を詳細に検討した。 実験ではヒト腸内壁組織の粘弾特性を考慮した腸管部位モデルを作製し、カプセルの搬送試験や回転および転がり機構の操縦特性を観測した。本カプセルの独創性は、本体を前後2分割して各々を独立制御し、その駆動の合理的な組み合わせで任意方向への各運動を可能にする点にある。操縦特性の有用性を確認するためにビデオ撮像を用いた観察を行い、その結果、(1) カプセル前後室の外周に、互いに反対方向となるように施した螺旋構造に起因する駆動力の組合せによって、ほとんど任意方向へのカプセルの姿勢制御ができる可能性が確認された。また前後室に内装したギア比の設定およびその組合せによって、前進および後退速度を任意に制御できる可能性も示唆された、(2) 腸内環境を模擬したテストコースによって走行試験を行い、安定した並進運動による管内移動速度を示すことが観察された。また僅かな潤滑処理でも、駆け上がり角に対する摩擦力は大きく減少し、消化管内壁に作用する摩擦力は数mNと想定された。さらに試作機では摩擦や回転に伴うエネルギー損失が大きく実測されたが、ダウンサイジングに伴う摩擦力の大幅な低減により、エネルギー損失も減少することが期待されるなど、本カプセルの基本設計に対する有用性が保証された。 滞留回避機構の操縦性に焦点を当てるため、カプセルの遠隔操作が容易なモーター駆動を採用しているが、自走方式についてはリニア推進の適用を展開している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度においては、カプセルの滞留回避機構を発現させるための駆動制御方式の操縦性検討を主目的とし、試作装置を使用して、その操縦特性を詳細に検討した。本研究で提案するカプセルの独創性は、本体を前後2分割して各々を独立制御し、その駆動の合理的な組み合わせで任意方向への各運動を可能にする点にある。構造体外周に螺旋構造を付与して機能的な運動を駆動することは、機構学の観点より広く利用される一般的な駆動方法であるが、カプセル内視鏡への適用は本研究が初の試みである。 操縦特性の有用性を確認するためにビデオ撮像を行い、前後ギア駆動方向の組み合わせにより、カプセルに8種類の基本動作を安定的に付与することができることを確認した。また駆動速度を任意に設定すれば、腸内壁に対するカプセルの3次元的な方向への駆動および移動速度を、ほとんど無段階で安定制御できる可能性も明らかとなった。とくに憩室や狭窄部位からの脱出に際しては、上記駆動制御法を組み合わせた脱出プログラムを構築しておけば滞留が回避でき、また方向転換も容易であるため、任意の部位に戻って再度内部を撮像することも可能であることも分かった。 本年度はカプセル操縦制御に基づく滞留回避機能の発現を目的とするため、カプセルの遠隔操作が容易なモーター駆動を採用して、姿勢制御方式が滞留回避特性に及ぼす影響を検討しているが、自走方式についてはリニア推進の適用を次年度に展開する予定で準備を進めている。 カプセルの脱出動作には、消化管内壁との間の摩擦力や回転を利用する。そのためカプセルが腸内壁を傷つけない最大の負荷可能量を把握する目的で、すべり覚センサーとして歪ゲージを外周に取り付け、測定用ホイーストンブリッジおよびオペアンプ回路を内蔵させている。ただし駆動操作に伴う歪量と操作特性の関係については現在試験を進めており、その詳細については今後の検討課題とした。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度では主にカプセル自走のためのリニア推進駆動方式を検討し、その最適化を図ることを目的とする。すなわち、これまでのリニアモーター設計の経験を基に、実用化サイズのカプセルを試作し、安定した走行と操縦性を保証する制御プログラムを確立する。走行方式には、可動磁石の反作用力を利用するスライド走行と、可動磁石をカプセル内壁に衝突させて移動させるノック走行を採用し、その走行特性と制御特性との関係を検討する。 駆動制御にはマイコン制御を使用し、また外周コイルの磁界はDCモーター用フルブリッジドライバによって制御し、推進力と速度の制御を行うこととする。マイコン制御は電流をパルスで制御するため、コイルに発生する磁界をほとんど減衰させることなく維持することが可能である。また本駆動方式は磁石の作用・反作用力を利用するため、パルス制御の発展形であるPWM制御が必要である。そのため腸管モデルを使用した試験により、その操縦性を保証するPWM信号周期の最適化およびオンパルスの通電幅やパルス幅の変調を詳細に考察する予定である。 可動磁石の相対位置制御に関しては、ノック式走行は容易かつ精度よく制御可能であるが、スライド走行では可動磁石の慣性力制御が難しく、平均搬送速度は優るものの、1ストロークの変動が大きいことを経験より明らかにしている。そのため安定した走行の保証を目的として、電流密度や誘導される磁束密度と、PWM周期との詳細な関係を基にした操作プログラムの構築を検討する。また腸管モデルによる試験走行ではカプセル作動をビデオ撮像によって観察し、PWM周期と走行特性(移動速度やストロークあたりの移動距離の安定性)の関係を詳細に考察し、各走行方式を最適化する制御プログラムの構築を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度では、カプセル内視鏡の自走方式の確立を中心として遂行するため、本課題に合わせた試作機作製のための磁石・コイル等の材料費、加工費、マイコンキット、磁界制御のためのDCモーター用フルブリッジドライバ、マイコン制御のためのマザーボードや種々な電子部品を中心とする消耗品、および腸内雰囲気を模擬した環境下でのカプセル操縦特性を測定するため、カプセルサイズに合わせたヒト腸内壁組織の粘弾特性を考慮した腸管部位モデル作製用の高分子基材および各種薬剤など、消耗品費を中心とした研究費の使用が主となる。 本研究ではカプセル本体の自走方式としてリニア推進機構を採用しており、リニアモーター外周コイルへの磁束制御用、およびコイル発生する磁場がカプセルの運動や機能に及ぼす影響を定量的に検討する目的として、簡易タイプの直流安定化電源や検流計を、またカプセルの自走制御プログラムの最適化を目的としており、種々なテスト走行における出力応答特性を調べるために、簡易型のオシロスコープおよびファンクションジェネレーターを準備する。 さらにカプセルの走行特性と制御特性の試験は、愛知工業大学(連携研究者:工学部・機械工学科、水野光国 教授)にて行うため、当該大学学生の研究補助に対する謝金等の試験に係る費用、および研究代表者の出張費等への支出を予定している。
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