2013 Fiscal Year Research-status Report
リニア推進駆動および滞留回避機能を有する自走式カプセル内視鏡の開発
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24650293
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
森 英利 富山大学, 大学院理工学研究部(工学), 教授 (10144130)
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Keywords | 検査・診断システム / 内視鏡 / カプセル |
Research Abstract |
本研究は、本来最も使用を必要とするにも拘らず禁忌事項として制限される、憩室や狭窄部位の疑われる被験者にも適用可能なカプセル内視鏡の基本設計指針の開発を目的としており、その問題解決のために(1)カプセル自走方式の開発、(2)滞留回避機能の付与を中心課題として研究を進めている。 本年度においては、(1)ではリニア推進機構を利用したスライドおよびノック走行方式の2方式を検討し、試作機による腸管内壁モデル内における移動特性を実測評価し、その有用性を考察した。その結果、パルス信号のPWM周期制御によって、カプセル移動速度を任意制御できる可能性が明らかになった。また両走行方式共にPWM周期の最適化によって安定した移動特性を示し、1ストローク毎の平均移動速度については、スライド走行方式がノック式走行方式の約2倍であった。しかし可動磁石の相対位置制御に関しては、ノック走行方式の方が容易かつ制度よく制御可能であるのに対し、スライド走行では可動磁石の慣性力制御が難しく、ストローク幅が1ストローク毎に変動し易い結果が得られた。そこで安定した走行を保証するため、電流密度や誘導される磁束密度と、PWM周期との詳細な関係を基にした操作プログラムを検討している。また (2)における本研究の滞留回避機構付与の独自性は、カプセル本体を前後2分割して各々を独立制御し、その駆動の合理的な組み合わせで任意方向への各運動を可能にする点にある。そのためにカプセル前後室の外周に、互いに反対方向となるように施した螺旋構造に起因する駆動力の組合せによって、ほとんど任意方向へのカプセルの姿勢制御ができる可能性を確認している。螺旋構造を付与したカプセルの移動特性を検討するため、螺旋径および螺旋リード角を種々変化させたカプセルモデルを作成し、腸管モデル内での移動速度の実測により、最適な螺旋の形態について検討した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、禁忌事項として使用制限される被験者にも適用可能なカプセル内視鏡の基本設計指針の開発を目的としており、その問題解決のために(1)カプセル自走のための機構開発、(2)滞留回避機能の付与を中心課題として研究を進めている。 (1)に関しては、リニア推進機構を利用したスライドおよびノック走行方式の2方式を提案し、移動特性の実測評価より、その有用性を実証している。とくにパルス信号のPWM周期制御によって、カプセル移動速度を任意制御できる可能性を明らかにした。また両走行方式共にPWM周期の最適化によって安定した移動特性を示し、平均移動速度や可動磁石の相対位置制御に関連し、実用化を前提とした両方式の特性について有用な知見を得ている。 (2)に関して本研究で提案するカプセルの独創性は、本体を前後2分割して各々を独立制御し、その駆動の合理的な組み合わせで任意方向への各運動を可能にする点にある。構造体外周に螺旋構造を付与して機能的な運動を駆動することは、機構学の観点より広く利用される一般的な駆動方法であるが、カプセル内視鏡への適用は本研究が初の試みである。操縦特性の有用性を確認するために試作機によるビデオ撮像を行い、カプセル本体に8種類の基本動作を安定的に付与することができることを確認した。また駆動速度の任意設定により、腸内壁に対する3次元方向への駆動および移動速度を、無段階で安定制御できる可能性も明らかにしている。これにより憩室や狭窄部位からの脱出に際しては、上記駆動制御法を組み合わせた脱出プログラムを構築しておけば滞留が回避でき、また方向転換も容易であるため、任意の部位に戻って再度内部を撮像することも可能であることも実証した。 本研究は、自走カプセルの磁場が移動特性に及ぼす影響等の実証に関しての実験を先送りしてはいるものの、その他に関してはほぼ計画に沿って実行されている。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の目的は、滞留回避機能を本体に具備した自走式カプセル内視鏡の設計指針を提案することにある。これまで自走方式については、リニアモーター設計の経験を基に、可動磁石の反作用力を利用するスライド走行と、可動磁石をカプセル内壁に衝突させて移動させるノック走行を提案し、その走行特性と制御特性との関係を検討して、両方式の有用性を実証してきた。今後はカプセルの安定した走行を保証するため、PWM信号周期の最適化およびオンパルスの通電幅やパルス幅の変調など、カプセル走行制御を中心に考察する予定である。 カプセルの滞留回避機能の開発に関しては、カプセル本体に螺旋構造を付与し、さらに前後2分割して各々を独立制御し、その駆動の合理的な組み合わせで任意方向への各運動が可能であることを実証してきた。提案するカプセルの脱出動作には、消化管内壁との摩擦力やカプセル本体の回転能を利用する。そのためカプセルが消化管内壁を傷つけない最大の負荷可能量の把握が課題であり、駆動操作に伴う内壁の歪量と操作特性の関係を中心に検討していく予定である。 滞留回避機構を本体に付与したカプセルを自走させるためには、リニア推進機構の超小型化が必要技術となる。本研究では、滞留回避機能を付与した自走式カプセルの実用化がより容易になると予想されるシステムとして、連結式自走カプセル内視鏡を提案する。これは走行カプセルとカメラ搭載や薬剤注入機能などをもつ作動カプセルを可撓シャフトにより連結したもので、制御が極めて容易である。すでにモーター駆動した走行カプセルを試作し、べベルギヤボックスを介して作動カプセルの走行が制御できる可能性を得ており、本研究成果は、すでに自走方式や滞留回避機構に関する基本的な概念設計を発表してきた日本医療機器学会誌に投稿する準備を進めている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本研究ではカプセル本体の自走方式としてリニア推進機構を採用しており、本年度ではリニアモーター外周コイルへの磁束制御用、およびコイル発生する磁場がカプセルの運動や機能に及ぼす影響を定量的に検討する目的として、簡易タイプの直流安定化電源や検流計を、またカプセルの自走制御プログラムの最適化を目的としており、種々なテスト走行における出力応答特性を調べるために、簡易型のオシロスコープおよびファンクションジェネレーターを準備することとしていた。しかしリニア推進機構としてのスライドおよびノック方式を確定・提案するまでの試行錯誤に時間を要したことにより、その後の試作機による腸管内壁モデルにおける安定走行を保証する移動特性とPWM周期制御の最適化が遅れたため、上記課題は次年度に引き継ぐこととした。 次年度への研究引き継ぎ事項に従い、次年度では上記物品を準備するとともに、本課題に合わせた試作機の改良費およびマイコン制御のためのマザーボードや種々な電子部品を中心とした消耗品、ヒト腸内壁組織の粘弾性を考慮した腸管内壁モデルの改良を主とした高分子基剤や各種薬剤などの消耗品、を中心とした研究費の使用が主となる。 さらにカプセルの走行特性と制御特性の試験は、連携研究者(前愛知工業大学教授、水野光国 氏、現在は水野医理化学研究所(愛知県瀬戸市))と共に行うため、研究代表者の出張費等への支出、および本学学生の研究補助に対する謝金等の試験に係る費用を予定している。
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