2012 Fiscal Year Research-status Report
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24650301
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
酒井 宏水 早稲田大学, 重点領域研究機構, 教授 (70318830)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 国際研究者交流、シンガポール / 検査・診断システム / ヘモレオロジー / 微小循環 / 赤血球凝集 |
Research Abstract |
平成24年度は主に、微小流路分析システムの構築を目的とした。酸素透過性を有する微小細管(内径25um, 壁厚37.5um, 長さ150 mm, 平河ヒューテック社製, フッ素化ethylenepropylene copolymer製)を用いた。細管の一端を赤血球が入っているリザーバータンクに連結させ、透明アクリル板とシリコン板を用いて水槽を作製し、細管を水槽の中に浸漬した。顕微鏡ステージに水平に置き、リザーバータンクにシリンジで圧力をかけることで、赤血球を流動させた。圧力は圧力センサーでモニターした。高速度カメラにて赤血球形状を撮影収録し、モニターで確認するシステムを構築した。異常赤血球のモデルとして、高分子量デキストラン添加により赤血球凝集を促進した系の解析を、研究協力者のDr. S. Kim(シンガポール国立大学バイオエンジニアリング部門)との共同で検討した。内壁側に形成されるRBC-free layer (血漿層)の厚み、及び形成周期をcross-covarianceおよびauto-correlation法にて計測した。血漿層の厚みはデキストランの添加によって顕著に増加した。厚みの変動計数は凝集が促進されるに従い減少した。これは、凝集が促進されると赤血球が壁面に接触する頻度が減少することに起因する。パワースペクトル密度解析の結果からも同様に、血漿層の変動計数の減少が観測された。これは、赤血球凝集が促進されるとこれが強固になり、血漿層の変形のし易さが低下するためと考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度交付申請書の実施計画に記載した通り、当該年度は赤血球流動状態の計測が出来るシステムを早稲田バイオサイエンスシンガポール研究所に設置することを目標とし、これを達成することができた。また、研究協力者であるDr. S. Kim (シンガポール国立大学バイオエンジニアリング部門)との共同研究を開始し、手始めに本システムを用いて、異常赤血球モデルの計測を実施することができた。ここまでの成果については、論文投稿中である。以上の理由により、概ね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
異常赤血球について、微小細管内を流動する際の形状と血漿層の厚みの解析、また酸素放出速度を観察する。赤血球からの酸素放出速度が、異常赤血球の場合および凝集によってどのように変化するか検討する。また同様に、細管を一酸化窒素(NO)が溶解した液体に浸漬させることにより、deoxyHbがNOを結合する反応、或はHbO2がNOと反応してmetHbに変化する反応の解析を行い、比較検討したい。またシミュレーションによる解析も取り入れたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度予算の残額および25年度の予算を合わせ、246万円の研究費について、以下の使用計画を考えている。実験試薬類・消耗品の購入に76万円を計上する。また、平成25年4月1日に奈良県立医科大学に着任したため、生体材料の保管用の冷蔵庫・冷凍庫の新規購入費用として80万円、更に、今後の研究活動の継続には、早稲田ハイオサイエンスシンガポール研究所に数ヶ月に1度の頻度で滞在し、シンガポール国立大学のDr. Kimとの共同研究を進める必要がある。そのため、海外出張費として80万円を必要とする。その他、郵送代や学会参加費等で10万円としたい。
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